文献探訪009
SNSなどで「胎児の細胞が母親の体を治し続ける」という話題を見かけることがあります。 胎児由来細胞が母体へ移行し長期間残ることは論文で確認されていますが、 現在の医学的な理解では
「組織修復に関与する可能性がある」 という段階にとどまっています。
胎児マイクロキメリズムとは
妊娠中、胎盤を通して母体と胎児の間では細胞が行き来しています。 胎児の細胞が母体に移行し体内に残る現象を 胎児マイクロキメリズムと呼びます。
胎児細胞が母体へ移行すること自体は、すでに確立された事実です。
胎児細胞は出産後も残る
胎児由来細胞は出産後も長期間残ることがあり、 数十年後でも検出される例が報告されています。
存在部位は血液だけでなく、皮膚・肝臓・心臓・脳など多岐にわたります。
損傷組織に集まる可能性
動物実験では、母体の心筋障害部位に胎児細胞が集まり、 心筋細胞や血管細胞への分化が示唆されています。
ただし「治療している」と断定することはできず、あくまで可能性の段階です。
免疫との関係
胎児細胞は創傷治癒だけでなく、免疫調節との関係も議論されています。 一方で自己免疫疾患との関連も指摘されています。
まとめ
- 胎児細胞は母体へ移行する
- 出産後も長期間残る
- 損傷部位に集まる可能性がある
- 修復と免疫の両面に関与しうる
- 「治す」と断定するのは現時点では不適切