カンジダ膣炎

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亜鉛探訪No.028 

カンジダ膣炎と亜鉛

『亜鉛探訪028』へようこそ!

カンジダ膣炎に亜鉛の予防効果が報告されています。

1. はじめに

カンジダ膣炎は、多くの女性が経験する一般的な感染症ですが、再発しやすく、症状が強い場合には日常生活に支障をきたすこともあります。カンジダ膣炎は、Candida albicans という真菌(カビ)が膣内で異常増殖することで発症し、かゆみ、白いおりもの、腫れ、不快感 などの症状を引き起こします。
近年、亜鉛が免疫機能の調整や抗菌作用を持つことが注目され、カンジダ感染の予防や治療に役立つ可能性 が研究されています。本記事では、亜鉛がカンジダ膣炎にどのように関与するのか、最新の研究を基に解説します。

2. カンジダ膣炎の原因と症状

カンジダ膣炎は、もともと膣内に常在しているカンジダ菌が、免疫の低下やホルモンバランスの乱れ などの影響を受けて異常増殖することで発症します。主な原因として、以下のようなものが挙げられます。
  • 抗生物質の使用:膣内の正常細菌が減少し、カンジダが増殖しやすくなる
  • ホルモンバランスの変化:妊娠やピルの使用による影響
  • 免疫力の低下:ストレスや栄養不足による影響
  • 高糖質食の摂取:糖分がカンジダの増殖を促進する
症状は個人差がありますが、かゆみ、白い酒粕状のおりもの、腫れ、灼熱感 などが一般的です。

3. 亜鉛の免疫と抗菌作用

亜鉛は免疫機能の維持に不可欠なミネラル であり、特にT細胞の活性化やマクロファージの機能に関与しています。また、亜鉛は抗菌ペプチド(βディフェンシンなど)の産生を促進し、カンジダ菌を直接抑制する働き を持っています。
亜鉛が不足すると、免疫細胞の働きが低下し、カンジダ膣炎の発症リスクが高まる可能性 があります。

4. 研究から見る亜鉛の抗カンジダ作用

最近の研究では、亜鉛がカンジダ菌の増殖を抑制する 可能性が示されています。具体的には、
  • 抗菌ペプチドの発現促進:亜鉛が膣粘膜の抗菌ペプチドの産生を増加させ、カンジダの増殖を防ぐ
  • 炎症の調整:亜鉛がNF-κBシグナル経路を調整し、過剰な炎症を抑制する
  • バイオフィルム形成の阻害:亜鉛がカンジダ菌の生存戦略であるバイオフィルムの形成を抑え、抗真菌薬の効果を高める

5. カンジダ膣炎の予防と亜鉛摂取のポイント

日常的に亜鉛を意識的に摂取すること が推奨されます。

亜鉛を多く含む食品

  • 牡蠣(特に豊富)
  • 牛肉、ラム肉
  • ナッツ類(カシューナッツ、アーモンド)
  • 卵、チーズ

サプリメントの活用

  • 1日の適正摂取量:10〜15mg(最大40mgまで)
  • 長期間の過剰摂取は銅低下を招く可能性があるため定期的な採血検査が必須

亜鉛の吸収を妨げる要因

  • フィチン酸(玄米、豆類)
  • 過剰な鉄・カルシウムの摂取

6. まとめ

亜鉛は、免疫機能の向上、抗菌ペプチドの産生促進、バイオフィルム阻害 などの作用を通じて、カンジダ膣炎の予防・治療の補助に役立つ可能性があります。日々の食事やサプリメントで適切な亜鉛摂取を心がけることで、再発リスクを抑えることができるかもしれません。

参考文献

タイトル 

亜鉛は炎症性真菌タンパク質の発現を抑制することにより膣カンジダ症を予防する

文献

Sci Transl Med. 2023 Dec 6;15(725):eadi3363.

抄録

カンジダは毎年推定5億例の外陰カンジダ症(VVC)を引き起こしている。 VVCは最も一般的にカンジダ・アルビカンスによって引き起こされ、この環境では、非保護的好中球浸潤、侵攻性局所炎症、および症候性疾患を誘発する。
この真菌感染症は流行しているにもかかわらず、その免疫病理を支える分子メカニズムについてはほとんど知られていない。
本研究では、VVCの免疫病理を決定する分子機構と、VVCを予防する簡単な方法について述べる。
亜鉛の制限に応答して、C. albicansはPra1(pH調節抗原)と呼ばれる微量ミネラル結合分子を放出する。 ここでわれわれは、PRA1遺伝子が膣感染時に強く発現上昇し、その発現が女性の炎症性サイトカイン濃度と正の相関があることを示した。
PRA1の遺伝的欠失はマウスの膣炎を予防し、亜鉛溶液の塗布はこの遺伝子の発現を低下させ、免疫病理もブロックした。
また、再発性VVCに罹患した女性を亜鉛ゲルで治療すると、再感染が予防されることも示した。
従って、我々は症候性VVCの重要なメディエーターを同定し、この病気と闘うための様々な予防法を開発する機会を得た。

要約

この論文では、亜鉛がCandida albicans の増殖を抑制し、炎症応答を調整する可能性があることが示唆されています。具体的には、
  • 抗菌ペプチドの産生を促進 – 亜鉛は抗菌ペプチド(例えば βディフェンシン)の発現を増加させ、真菌の増殖を抑制する。
  • 炎症の抑制 – 亜鉛はNF-κBシグナルを調整し、過剰な炎症反応を抑える。
  • カンジダのバイオフィルム形成を阻害 – 亜鉛はカンジダの生存戦略のひとつであるバイオフィルム形成を抑制し、抗真菌剤の効果を高める可能性がある。