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亜鉛探訪 No.008

ランゲルハンス細胞と亜鉛

『亜鉛探訪008』へようこそ!

当院は皮膚科のため、「亜鉛探訪006」でご紹介した論文の中から、今回は皮膚についてさらに詳しく掘り下げます。

今回のテーマ

皮膚の免疫を担うランゲルハンス細胞(Langerhans Cell:LC)は、細菌やウイルスなどの異物を見つけて免疫細胞へ情報を伝える「見張り役」です。

亜鉛は、このランゲルハンス細胞の発生や働きに深く関わっていることが分かってきました。 亜鉛が不足すると皮膚の免疫機能にも影響を及ぼす可能性があります。 今回は、亜鉛とランゲルハンス細胞の関係を分かりやすく解説し、私たちの身体を守る皮膚の仕組みを一緒に探っていきましょう。

1. ランゲルハンス細胞(LC)と亜鉛

皮膚の免疫を守る細胞
POINT

ランゲルハンス細胞(LC)は、表皮に存在する免疫細胞の一種で、体内へ侵入した細菌やウイルスなどの異物を見つけて免疫細胞へ伝える抗原提示細胞です。

先天性の亜鉛欠乏症である腸性肢端皮膚炎(AE)では、SLC39A4(ZIP4)遺伝子の異常によって腸から亜鉛を十分に吸収できず、表皮のランゲルハンス細胞が著しく減少することが知られています。

2. TGF-β1とランゲルハンス細胞

POINT

TGF-β1(トランスフォーミング増殖因子β1)は、ランゲルハンス細胞が表皮で正常に存在し続けるために欠かせないタンパク質です。

AE患者や亜鉛欠乏マウスでは表皮中のTGF-β1が減少しており、亜鉛不足によって転写因子の働きが低下し、その結果TGF-β1の産生が減少してランゲルハンス細胞が消失すると考えられています。

3. 亜鉛欠乏で細胞死が増える

POINT

細胞内の亜鉛を除去するTPENを用いた実験では、ランゲルハンス細胞はアポトーシス(細胞の自然な死)を起こしやすくなることが確認されています。

一方で、皮膚の主要な細胞であるケラチノサイト(角化細胞)では同じ変化はほとんど認められず、ランゲルハンス細胞は亜鉛不足の影響を特に受けやすい細胞であることが分かっています。さらに、亜鉛を補充すると、失われたランゲルハンス細胞は再び表皮へ回復することが報告されています。

4. 亜鉛のホメオスタシス維持

今後の研究への期待
POINT

これらの研究から、亜鉛はランゲルハンス細胞の生存・増殖・免疫機能の維持に欠かせないことが分かっています。

しかし、ランゲルハンス細胞の中で亜鉛を運搬するZIP・ZnTファミリーや、亜鉛を結合・貯蔵するメタロチオネイン(MT)がどのように働いているかは、まだ十分に解明されていません。今後の研究によって、亜鉛と皮膚免疫との関係がさらに明らかになることが期待されています。

参考文献

題目
亜鉛と皮膚疾患
文献
Nutrients. 2018 Feb 11;10(2):199.
要約

本総説では、亜鉛が皮膚の健康維持に欠かせない微量元素であることが詳しく解説されています。皮膚は体内で3番目に亜鉛を多く含む組織であり、角化細胞、線維芽細胞、ランゲルハンス細胞など、さまざまな細胞で亜鉛が重要な働きを担っています。

また、細胞内の亜鉛濃度を調節するZIP・ZnTトランスポーターに異常が生じると、腸性肢端皮膚炎(AE)をはじめ、エーラス・ダンロス症候群、新生児亜鉛欠乏症、疣状表皮異形成症などの皮膚疾患を引き起こすことが紹介されています。

さらに、栄養不足による後天的な亜鉛欠乏でも、皮膚炎、脱毛、創傷治癒の遅延などが生じることが報告されており、亜鉛の恒常性(ホメオスタシス)を維持することが皮膚の健康に極めて重要であると結論づけています。

亜鉛と皮膚疾患