牡蠣オイスター

HOME | 文献探訪 | 牡蠣アレルギーの抗原

文献探訪No.001

牡蠣アレルギーと抗原

『文献探訪001』へようこそ!

牡蠣アレルギーは稀ですが、美味しい牡蠣が食べれないと、家族は気を遣います。将来は、低アレルギー牡蠣や減感作療法ができるようになるといいなあと思います。

はじめに

牡蠣は「海のミルク」と称されるほど栄養価が高く、多くの人々に親しまれています。しかし、一部の人々にとっては、牡蠣の摂取がアレルギー反応を引き起こす原因となります。

牡蠣アレルギーの原因

牡蠣アレルギーの主な原因は、牡蠣に含まれるタンパク質「トロポミオシン」に対する免疫系の過剰反応です。このタンパク質は他の甲殻類や軟体類にも含まれており、これらの食品との交差反応性が報告されています。(長崎大学医学部)

症状と診断方法

牡蠣アレルギーの症状は、摂取後数分から数時間以内に現れることが多く、以下のようなものがあります。

皮膚症状

蕁麻疹、発疹、かゆみ

消化器症状

腹痛、下痢、嘔吐

呼吸器症状

喉のかゆみ、息苦しさ、喘鳴

診断

血液検査による特異的IgE抗体の測定や、皮膚プリックテストが用いられます。(長崎大学医学部)

治療と予防策

最も効果的な予防策は、牡蠣や関連する食品の摂取を避けることです。症状が現れた場合、抗ヒスタミン薬やステロイド薬の投与が行われます。重篤な場合には、アドレナリン自己注射薬(エピペン)の使用が推奨されます。(ピカール)

最新の研究動向

近年、牡蠣アレルギーの原因抗原解析や、低アレルゲン化食品の開発に関する研究が進められています。これらの研究は、アレルギー患者の生活の質向上に寄与することが期待されています。

参考文献

魚類アレルギーの3例 : 原因抗原解析に関する検討とともに
原田 晋(はらだ皮膚科クリニック)ら, Journal of Environmental Dermatology and Cutaneous Allergology4(1)Page41-6, 2010
患者さんへ:魚介アレルギー長崎大学病院 皮膚科・アレルギー科
加熱しても発症する牡蠣アレルギーの原因とはヘルスケアPOCKET

海外研究2

タイトル

主要カキ・アレルゲンCra g 1の低アレルゲン変異体は、カキ・トロポミオシンのアレルゲン性を軽減

文献

Int J Biol Macromol. 2020 Dec 1:164:1973-1983.

要約

アレルゲン特異的免疫療法の開発には、IgE反応性が低いアレルゲンの設計が望まれています。カキに含まれる主要なアレルゲンであるトロポミオシン(Cra g 1)については、これまで免疫療法が行われていませんでした。本研究では、Cra g 1の低アレルゲン化誘導体を作製し、そのアレルゲン性を評価しました。
具体的には、エピトープの欠失や部位特異的変異を導入することで、4種類の低アレルゲン誘導体を構築し、これらが患者およびCra g 1に感作されたラットのIgEに対して反応性が低いことを確認しました。さらに、ヒスタミン、IL-4、IL-6、TNF-αなどのアレルギー性メディエーターの脱顆粒や分泌が有意に減少することが分かりました。
また、IgEチャレンジを受けた細胞において、FcεRI依存性シグナル伝達経路に対する低アレルゲン誘導体の影響も調査され、その結果、これらの誘導体がFcεRIを介したシグナル伝達カスケードを減弱させることが確認されました。
この研究は、低アレルゲン化分子が貝アレルギーの臨床免疫療法において有望な戦略を提供することを示唆しています。

海外研究1

タイトル

より良い診断のための太平洋カキ(Crassostrea gigas)由来組換えトロポミオシン

文献

Foods. 2022 Jan 30;11(3):404.

はじめに

マガキ(Crassostrea gigas)は商業的に重要な軟体動物であり、生食されることが多い食材です。栄養豊富ですが、食物アレルギーの原因ともなりえます。しかし、そのアレルゲンや他のアレルゲンとの交差反応性については、現時点で十分な理解が進んでいません。このため、特にマガキに対するアレルギーの診断が難しい状況にあります。

目的

免疫ブロッティングおよび質量分析を用いて、カキに感作された21人の患者のIgE感作プロファイルを生カキと加熱カキに対して調査し、診断向上のための組換えアレルゲンの有用性を評価することです。

結果

トロポミオシン(Cra g 1)が21人中18人の主要なアレルゲンとして同定され、これはカキ初のWHO/IUIS登録アレルゲンとなりました。また、カキ、クルマエビ、ダニ由来のトロポミオシンに対するIgE結合能を比較した結果、患者間で異なる交差反応性が見られました。さらに、3種のトロポミオシンのアミノ酸配列比較から、IgE結合エピトープを含む5つの領域が交差反応性の原因である可能性が示唆されました。

まとめ

本研究は、主要アレルゲンCra g 1の特徴を解明し、組換えトロポミオシンがアレルギー診断や免疫療法の改良に寄与する可能性を示しています。