基底細胞癌

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亜鉛探訪No.019

皮膚がんBCCと亜鉛

『亜鉛探訪019』へようこそ!

亜鉛が結合するタンパク質の中で、抗酸化酵素スーパーディスムドオキシダーゼ(SODと略記)は、とても大切です。酸化マーカーのマロンジアルデヒド(MDAと略記)は、皮膚がんの一種である基底細胞癌(BCCと略記)とは、どうやら関係があるようです。皮膚の癌化の仕組みを一緒に探ってみましょう!

1. はじめに:基底細胞がんとは

基底細胞がんは、皮膚がんの中で最も多いタイプで、主に紫外線などの影響で皮膚の表皮基底細胞ががん化することで発生します。

2. 酸化ストレスと基底細胞がんの関係

酸化ストレスとは、体内で活性酸素が過剰に生成され、細胞にダメージを与える状態を指します。この酸化ストレスが、基底細胞がんの発生に関与していると考えられています。

3. 亜鉛の役割

抗酸化作用と免疫機能のサポート

亜鉛は、抗酸化酵素の構成成分として、体内の酸化ストレスを軽減する働きを持っています。また、免疫機能の維持にも重要な役割を果たしています。

4. 研究事例

基底細胞がんにおける亜鉛とMDAの関係

ある研究では、基底細胞がん患者の血中で、酸化ストレスの指標であるマロンジアルデヒド(MDA)の濃度が高く、亜鉛の濃度が低いことが報告されました。これは、酸化ストレスが亜鉛を消費しているためか、もしくは、元々亜鉛が少ないため、酸化ストレスに抵抗することができないためと考えられます。

5. 亜鉛の補給と基底細胞がん予防の可能性

亜鉛を適切に摂取することで、酸化ストレスを軽減し、基底細胞がんの予防に寄与する可能性があります。特に、紫外線によるダメージから皮膚を守るために、亜鉛の抗酸化作用が注目されています。

6. まとめ

亜鉛は、酸化ストレスの軽減や免疫機能のサポートを通じて、基底細胞がんの予防に重要な役割を果たす可能性があります。日常の食事や適切なサプリメントの摂取を通じて、亜鉛の十分な摂取を心がけることが大切です。

酸化ストレスとMDAの関係メカニズム

マロンジアルデヒド
マロンジアルデヒド(MDA)は、脂質過酸化の最終産物の一つであり、酸化ストレスの重要なバイオマーカーです。

1. 活性酸素種(ROS)の発生

体内の細胞は、ミトコンドリアでエネルギーを生産する際に、活性酸素種(Reactive Oxygen Species, ROS) を副産物として生成します。ROSには、スーパーオキシド(O₂⁻)、過酸化水素(H₂O₂)、ヒドロキシルラジカル(OH•)などがあり、これらが過剰に生成されると細胞にダメージを与えます。
紫外線や化学物質、喫煙、炎症などがROSの生成を促進し、酸化ストレスを引き起こします。

2. 脂質過酸化の開始

ROSは細胞膜を構成する不飽和脂肪酸(リン脂質)と反応し、脂質過酸化を引き起こします。
特に、ヒドロキシルラジカル(OH•) は脂肪酸の二重結合を攻撃し、過酸化脂質(Lipid Hydroperoxide, LOOH)を生成します。

3. マロンジアルデヒド(MDA)の生成

過酸化脂質(LOOH)が分解される際に、アルデヒド類(MDAや4-ヒドロキシノネナール(4-HNE)など)が生成されます。
MDAは特に、ポリ不飽和脂肪酸(PUFA) の酸化によって多く産生されます。
MDAはフリーラジカルが脂質と反応した証拠となり、酸化ストレスの指標として測定されます。

4. MDAによる細胞・DNA損傷

タンパク質とMDAの結合

MDAはタンパク質と反応し、タンパク質の構造を変化 させ、機能障害を引き起こします。酵素や受容体が変性し、細胞の働きが低下します。

DNAとの反応(変異誘発)

MDAはDNAのグアニン塩基と結合し、変異を引き起こします。これにより、がんのリスクが上昇 する可能性があります。

5. 免疫反応の活性化

MDAが増加すると、体はそれを異常な物質(ダメージシグナル) と認識し、免疫系が活性化します。慢性的な炎症反応が起こり、がんの発生や老化を促進 する可能性があります。

6. 亜鉛の役割:酸化ストレスの軽減

亜鉛は、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD) という抗酸化酵素の活性に関与し、ROSの除去を助けます。亜鉛はMDAの生成を抑制し、細胞の損傷を防ぐ働きをします。

まとめ

MDAは、脂質過酸化の結果として生成され、酸化ストレスの重要な指標となる物質です。過剰なMDAは細胞膜、タンパク質、DNAを損傷し、がんや老化のリスクを高めます。亜鉛は抗酸化作用を持ち、MDAの生成を抑えることで、酸化ストレスによるダメージを軽減する役割を果たします。

抗酸化力と亜鉛の関係

1. 活性酸素(ROS)の発生

紫外線、ストレス、炎症、喫煙、環境汚染などが原因で、活性酸素種(ROS) が過剰に発生。特にスーパーオキシド(O₂⁻) やヒドロキシルラジカル(OH•) が細胞にダメージを与える。

2. SOD(スーパーオキシドディスムターゼ)の働き

SODは亜鉛を含む抗酸化酵素 であり、活性酸素の一種であるスーパーオキシド(O₂⁻)を過酸化水素(H₂O₂)に変換 する。この過酸化水素(H₂O₂)は、その後カタラーゼやグルタチオンペルオキシダーゼ(GPx) によって無害な水と酸素に分解される。
🔽 SODの反応式
SODの働き
亜鉛が不足すると、SODの活性が低下 し、スーパーオキシド(O₂⁻)が蓄積しやすくなる。

3. 脂質過酸化の発生とMDAの生成

スーパーオキシドやヒドロキシルラジカルが増えると、細胞膜の不飽和脂肪酸 が攻撃され、脂質過酸化 が進む。その結果、脂質過酸化の最終産物としてマロンジアルデヒド(MDA)が生成 される。

4. 亜鉛が十分にある場合

✅ SODがしっかり働く
✅ スーパーオキシドが速やかに除去される
✅ 脂質過酸化が抑えられる
✅ MDAの生成が減少する

5. 亜鉛が不足している場合

❌ SODの働きが低下
❌ スーパーオキシドが増加
❌ 脂質過酸化が進行
❌ MDAの生成が増加 → 酸化ストレスの指標となる

まとめ

亜鉛はSODの働きをサポートし、活性酸素の除去を助けることで、MDAの生成を抑えることができる!つまり、亜鉛を適切に摂取することで、酸化ストレスを軽減し、細胞のダメージや皮膚がんのリスクを減らす可能性がある ということですね。😊

その他、抗酸化に必要な大切な酵素

1. カタラーゼ(Catalase)

必要なミネラル:鉄(Fe)

カタラーゼは、過酸化水素(H₂O₂)を水(H₂O)と酸素(O₂)に分解する酵素 で、主に肝臓や赤血球 で働いています。
鉄(Fe) を活性中心に持ち、この鉄が酸化還元反応を行うことで、過酸化水素を素早く分解します。
🔽 カタラーゼの反応式
カタラーゼ

鉄が不足するとどうなる?

カタラーゼの活性が低下し、過酸化水素が細胞内に蓄積 → DNAやタンパク質がダメージを受けやすくなる。
酸化ストレスが増加 → 細胞老化やがんのリスクが上がる可能性。

2. グルタチオンペルオキシダーゼ
(GPx, Glutathione Peroxidase)

必要なミネラル:セレン(Se)

グルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)は、過酸化水素や脂質過酸化物(LOOH)を無害なものに変える酵素 で、SODやカタラーゼと協力して働きます。セレン(Se) を活性中心に持つセレノプロテイン の一種で、強力な抗酸化作用を持っています。
🔽 グルタチオンペルオキシダーゼの反応式
グルタチオンペルオキシダーゼ
(GSH=グルタチオン、GSSG=酸化型グルタチオン)

セレンが不足するとどうなる?

GPxの活性が低下 → 過酸化水素や脂質過酸化物(LOOH)が細胞内に蓄積 し、酸化ストレスが増加。
免疫機能の低下 → 感染症にかかりやすくなる。
筋肉や心臓への影響 → セレン欠乏は「克山病(Keshan disease, 心筋症の一種)」や「カシン・ベック病(Kashin-Beck disease, 骨の異常)」のリスクを高める。

各酵素と必要なミネラル

酵素とミネラル
酵素の連携

参考文献

タイトル

基底細胞癌における亜鉛とマロンジアルデヒドの評価

文献

Iran J Public Health. 2017 Aug;46(8):1104-1109.

原文訳

背景

基底細胞癌(BCC)は、世界で最も一般的な皮膚癌の一つであり、その原因は生活習慣、化学汚染の増加、環境要因、栄養不良にある。 この癌の最も重要な原因は、酸化ストレスとフリーラジカルであるため、身体に対する抗酸化作用は非常に重要である。 本研究の目的は、BCC患者における亜鉛と(マロンジアルデヒド)MDAの変化を調べることである。

方法

本研究は2013年から2014年にかけて、症例患者と対照患者を対象に行われた。 サンプルは、イラン、テヘランのRazi病院で細胞がん患者から収集した。 原子吸光分析(AAS)法を用いて亜鉛濃度を評価した。 また、比色測定法によりMDAを評価した。

結果

MDA濃度は、対照群と比較して症例群で有意に高かった(P=0.001)。 また、症例群では対照群に比べて亜鉛濃度が低かった(P=0.000)。 MDAと肥満度(BMI)、亜鉛とBMIの間には相関はなかった。 結論 すべてのBCC患者は対照群と比較して有意なMDA血清を示した。 しかし、亜鉛血清の有意な減少が認められた。これは、酸化ストレスの過程で亜鉛を消費したためであり、2+イオンの形態の亜鉛の局所使用は、日光紫外線に対する抗酸化保護に効果的であると考えられる。