有棘細胞癌

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亜鉛探訪No.017

皮膚がんSCCと亜鉛

『亜鉛探訪017』へようこそ!

亜鉛が結合するタンパク質の中で、遺伝子であるDNAやRNAに関係するタンパク質のことをジンクフィンガーと呼びます。ジンクは亜鉛の英語呼称zinc、フィンガーは指の英語fingerです。ジンクフィンガーの仕組みを一緒に探ってみましょう!

1. 亜鉛と皮膚の健康

亜鉛は、私たちの体が健康な皮膚を保つために必要な栄養素です。亜鉛が不足すると、皮膚にトラブルが起こりやすくなるだけでなく、皮膚がんのリスクが高まる可能性があります。この記事では、亜鉛と皮膚がんとの関係をわかりやすく説明します。

2. 細胞の働きと亜鉛

TRIMというタンパク質の役割

私たちの体の細胞には、TRIMという名前のタンパク質があり、細胞の働きを助ける重要な役割をしています。このタンパク質の中には、TRIM29という特別なものがあって、亜鉛を使って細胞の調子を整えています。例えば、TRIM29は細胞の中でDNA(細胞の設計図)を守る手伝いをしています。
TRIMはトリパーテイトモチーフの略称です。

3. TRIM29と皮膚がん

最近の研究

研究では、TRIM29が皮膚がんの一つである有棘細胞癌(ゆうきょくさいぼうがん、SCCと略記)に関係していることが分かりました。このタンパク質は、細胞が増えすぎないように調整しています。しかし、TRIM29が少なくなると、細胞が移動しやすくなり、がんが進行する可能性があることが分かってきました。

4. どうして亜鉛が大切なの?

亜鉛は、細胞が傷ついたときにそれを修復する手伝いをします。また、体の免疫力を高める働きもあります。亜鉛が不足すると、細胞の修復がうまくいかなくなり、がんになりやすくなるかもしれません。TRIM29のように亜鉛を使うタンパク質が働けなくなると、皮膚がんのリスクがさらに高まると言われています。

5. 亜鉛を取ることで皮膚がんを防げる?

亜鉛を十分に摂取することは、皮膚を健康に保つためにとても重要です。将来、TRIM29の働きを助ける薬や、亜鉛を使った治療が皮膚がんの予防や治療に役立つ可能性があります。

6. まとめ

亜鉛は、体にとって大切な栄養素で、皮膚がんを予防する手助けをしてくれます。TRIM29というタンパク質が亜鉛を使って細胞を守ることで、がんになるリスクを下げているのです。日々の食事で亜鉛をしっかり取ることが、健康な皮膚を保つ第一歩です。

参考文献

タイトル

皮膚有棘細胞癌におけるTRIM29

文献

Front Med (Lausanne). 2021 Dec 20:8:804166.

原文訳

トリパーテイトモチーフ(TRIM)タンパク質は、シグナル伝達、転写制御、自然免疫、プログラムされた細胞死など、幅広い細胞生理学的プロセスにおいて重要な役割を果たしている。
ATDC遺伝子によってコードされるTRIM29タンパク質は、TRIMタンパク質ファミリーのメンバーのうち、RING-lessグループに属する。 B-boxドメインとコイルドコイルドメインに4つのジンクフィンガーモチーフを持ち、RINGの代わりにB-boxドメインをE3ユビキチンリガーゼとして利用する。
TRIM29はDNA結合に関連してホモ二量体やヘテロ二量体の形成に関与していることが見いだされ、さらに発がん、DNA損傷シグナル伝達、放射線感受性の抑制にも関与していることが示されている。
最近、我々はTRIM29がケラチンおよびFAM83Hと相互作用し、ケラチンの分布を制御していることを報告した。
さらに、皮膚SCCでは、TRIM29の発現がDNAメチル化によってサイレンシングされ、TRIM29の消失とケラチノサイトの遊走促進につながる。
本稿では、悪性腫瘍におけるTRIMファミリータンパク質の役割、特に皮膚SCCにおけるTRIM29の役割について概説する。