アルコールと肝臓

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亜鉛探訪No.020

アルコールと亜鉛

『亜鉛探訪020』へようこそ!

亜鉛が結合するタンパク質の中で、アルコール脱水素酵素(ADH)も、とても大切です。アルコールと肝臓の病気の関係を探ってみましょう!

1. はじめに
亜鉛とアルコールの関係性

亜鉛は、私たちの体内で多くの酵素の働きを助ける重要なミネラルです。一方、アルコールの摂取は亜鉛の代謝や吸収に影響を及ぼすことが知られています。本記事では、アルコールと亜鉛の関係性について詳しく解説します。

2. アルコール摂取による亜鉛欠乏のメカニズム

亜鉛の消費増加

アルコールの代謝には亜鉛を必要とする酵素が関与しており、過度な飲酒により体内の亜鉛消費が増加します。

吸収の阻害

アルコールは腸管からの亜鉛吸収を妨げることが報告されています。

排泄の促進

さらに、アルコール摂取により尿中への亜鉛排泄が増加し、体内の亜鉛レベルが低下します。

3. 亜鉛欠乏が引き起こす健康影響

肝機能の低下

亜鉛欠乏は肝臓の解毒作用や代謝機能を低下させ、アルコール性肝疾患(ALD)のリスクを高めます。

免疫力の低下

亜鉛は免疫機能の維持にも重要であり、不足すると感染症にかかりやすくなります。

味覚障害

亜鉛欠乏は味覚異常を引き起こし、食欲不振や栄養不足の原因となります。

4. 亜鉛補給の重要性と方法

食事からの摂取

亜鉛を多く含む食品として、牡蠣、牛肉、ナッツ類などがあります。バランスの取れた食事を心掛けましょう。

サプリメントの活用

必要に応じて、医師や栄養士と相談の上、亜鉛サプリメントの摂取を検討してください。

5. まとめ

アルコールの過剰摂取は、体内の亜鉛バランスを崩し、さまざまな健康問題を引き起こす可能性があります。適切な亜鉛の摂取とアルコールの節度ある摂取が、健康維持にとって重要です。

参考文献

タイトル

亜鉛とアルコール性肝疾患

文献

Dig Dis. 2010;28(6):745-50.

要約

背景

アルコール性肝疾患(ALD) の患者では、亜鉛欠乏が一貫して認められることが知られている。

目的

アルコールが細胞内の亜鉛の恒常性(バランス)にどのように影響するか を明らかにし、亜鉛欠乏がALDの発症に関与するかどうか を調べること。

研究のポイント

メタロチオネイン(MT) というタンパク質は、細胞内の亜鉛を調整する重要な役割を持つ。MTを過剰発現 させ、肝臓の亜鉛レベルを高めた遺伝子改変マウス(MT-TGマウス)は、アルコールによる肝障害に強い耐性 を示した。
MTを欠損 させ、肝臓の亜鉛レベルを低下させたマウス(MT-KOマウス)は、アルコールの毒性に対してより感受性が高い ことがわかった。
しかし、亜鉛を補給することでMT-KOマウスの肝障害も軽減 され、これはMTとは無関係な作用があることを示唆。

亜鉛の保護効果とそのメカニズム

肝臓の亜鉛レベルを正常化 し、慢性的なアルコール摂取による肝障害を軽減 。
抗酸化能力を高め、アルコール代謝のバランスを調整 することで、アルコールの毒性を抑える。
炎症性サイトカイン(TNF-α)やFasを介した細胞死を抑制 する。
肝細胞の脂質代謝(脂肪の分解と排出)を正常化 し、肝臓への脂肪蓄積を防ぐ。

結論

アルコールは肝臓の亜鉛バランスを乱し、細胞内の亜鉛不足を引き起こす 。
亜鉛が関与するタンパク質の働きが阻害されることが、ALDの発症に関与している可能性がある 。
食事やサプリメントによる亜鉛補給は、ALDの予防や治療に有効である可能性がある 。

要点まとめ

✅ アルコール摂取により肝臓の亜鉛レベルが低下
✅ 亜鉛を多く含むタンパク質(メタロチオネイン)が肝臓を守る役割を持つ
✅ 亜鉛補給は、抗酸化作用や肝機能の正常化を通じてアルコールによる肝障害を軽減
✅ 亜鉛不足が、肝臓の炎症や脂肪蓄積を引き起こす可能性がある

原文訳

亜鉛欠乏は、アルコール性肝疾患(ALD)における最も一貫した栄養学的/生化学的所見のひとつである。
我々の研究の目的は、アルコールが細胞の亜鉛ホメオスタシスをどのように阻害するか、また亜鉛欠乏がALD発症の原因因子であるかどうかを明らかにすることである。
メタロチオネイン(MT)は、細胞の亜鉛ホメオスタシスを担う主要なタンパク質である。 MTを肝に過剰発現させ、亜鉛レベルを上昇させたMTトランスジェニック(MT-TG)マウスは、エタノール誘発肝障害に抵抗性であった。
肝亜鉛が減少したMTノックアウト(MT-KO)マウスは、アルコール毒性に対してより感受性が高かった。 しかし、亜鉛投与はMT-KOマウスのアルコール肝障害にも有益な効果をもたらし、MT非依存的な作用を示唆した。
食餌による亜鉛補給は、肝亜鉛レベルを正常化し、慢性的にアルコールを摂取させたマウスの肝臓における病理学的変化を抑制した。
アルコール性細胞毒性に対する亜鉛の作用には、いくつかのメカニズムが関与していた。 亜鉛は細胞の抗酸化力を高め、アルコール代謝をアルコールデヒドロゲナーゼからチトクロームP4502E1に切り替えた。 亜鉛はサイトカイン産生とTNF-α受容体およびFasを介する細胞死経路を抑制した。
亜鉛は肝細胞核因子-4α(HNF-4α)とペルオキシソーム増殖活性化因子-α(PPAR-α)の活性を回復させ、肝脂肪酸β酸化と脂質分泌を促進した。
肝細胞培養では、亜鉛欠乏がHNF-4αとPPAR-αの不活性化を介して脂質蓄積を誘導することが示された。 これらの結果は、アルコール暴露が肝亜鉛ホメオスタシスを阻害し、細胞の亜鉛欠乏につながることを示唆している。
亜鉛放出による亜鉛タンパク質の不活性化は、ALDの病因における重要な分子メカニズムであると考えられる。