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亜鉛探訪No.012

聴覚と亜鉛

『亜鉛探訪012』へようこそ!

聴覚の仕組みを知ることは、健康を守るうえでとても大切なことです。今回の記事では、亜鉛が聴覚にどう関わっているのかを分かりやすくお話しします。聴覚の仕組みを一緒に探ってみましょう!

1. はじめに

亜鉛は抗酸化物質の調節や免疫反応の維持を含む多岐にわたる代謝機能を持つ重要な微量元素であり、聴覚機能にも深く関与しています。近年、亜鉛の不足が難聴に関連することがいくつかの研究で示されてきました。例えば、亜鉛のレベルが低下することで、内耳の機能や神経伝達に悪影響が及ぶ可能性が報告されています。
本研究では、亜鉛欠乏が聴覚機能にどのような影響を与えるかを詳細に検討しました。特に、内耳の構造や神経細胞成分、シナプスリボンの減少との関係を解析することで、亜鉛の聴覚への重要性を確認することを目的としています。

2. 研究の概要

CBA/N系統のマウスを対象に、普通食群と亜鉛欠乏食群に分け、亜鉛欠乏が聴覚に与える影響を比較しました。亜鉛欠乏が引き起こす聴覚閾値の変化や、内耳構造、シナプスの変化を、聴性脳幹反応(ABR)や歪曲産物音波放出(DPOAE)を通じて評価しています。

3. 方法

CBA/Nマウスを8週間にわたり普通食群または亜鉛欠乏食群で飼育し、聴覚評価としてABRとDPOAEを測定しました。また、亜鉛欠乏による組織的な変化を明らかにするため、内耳構造の組織切片を作成し、シナプスリボン、ニューロフィラメント、α-シヌクレイン(α-Syn)の発現を観察しました。

4. 結果

亜鉛欠乏食を摂取した8週齢のマウスでは、ABR閾値が上昇しましたが、DPOAE閾値や内耳の構造には変化が見られませんでした。しかし、内有毛細胞(IHC)のシナプスリボンの数が顕著に減少し、遠心性神経線維の障害も観察されました。外有毛細胞(OHC)の数やα-Synの発現には影響が見られませんでした。

5. 考察

本研究の結果から、亜鉛欠乏は内毛細胞のシナプスリボンに影響を与え、神経細胞の機能低下が生じることが示唆されます。これにより、亜鉛欠乏によって聴覚機能が損なわれ、特に難聴の一因になる可能性が考えられます。このことは、亜鉛が聴覚機能の維持において重要な役割を果たしていることを示しています。

6. まとめ

以上の結果は、亜鉛の補充が難聴予防において有効である可能性を示唆しています。特に、亜鉛欠乏による内毛細胞のシナプスリボン減少が難聴の一因となることから、日常的な亜鉛摂取が聴覚健康の維持に貢献する可能性があります。

参考文献

タイトル

亜鉛欠乏はCBA/Nマウスの内毛細胞のリボンシナプスを減少させることにより難聴を誘発する

文献

Biochem Biophys Res Commun. 2024 Jan 22:693:149396. 

原文訳

はじめに

亜鉛は、抗酸化物質の調節、免疫反応、聴覚機能など、私たちの代謝に重要な役割を果たしている。 亜鉛レベルが難聴と相関することは、いくつかの研究で報告されている。
我々は以前、亜鉛欠乏食を与えたマウスにおいて聴性脳幹反応(ABR)の閾値が上昇することを証明した。 しかし、聴力に対する亜鉛欠乏の影響は完全には解明されていなかった。
本研究では、亜鉛欠乏が神経細胞成分や蝸牛構造と関連して聴力に影響を及ぼすかどうかを調べた。

方法

CBA/Nマウスに普通食または亜鉛欠乏食を8週間摂取させ、ABRと歪曲産物音波放出(DPOAE)を評価した。 蝸牛切片をヘマトキシリン・エオジン液で染色した。 また、シナプスリボン、ニューロフィラメント、α-シヌクレイン(α-Syn)の発現を観察した。

結果

8週齢の亜鉛欠乏食マウスはABR閾値が上昇したが、DPOAE閾値や蝸牛構造に変化はなかった。 亜鉛欠乏食マウスでは、内有毛細胞(IHC)のシナプスリボンの数が減少し、遠心性神経線維の障害が観察された。 外有毛細胞(OHC)の数とα-Synの発現は変化しなかった。

まとめ

この結果は、亜鉛が介在する難聴は、IHCの神経細胞成分の喪失と関連していることを示唆している。