すり傷(擦過傷)
どんな軽いすり傷でもきちんと治療した方が早くなり、傷跡がきれいになります。
要点 | ◎目に見えない細かい汚れをブラシで掻き出して、取り除くことが絶対必要です。水道で洗い流すだけでは不十分です。 ◎ラップやキズパワーパッドでカバーすると感染を悪化させる恐れがありますので、メロリンのような滲出液を吸収できる非固着性パットがお勧めです。 ◎医療関係の皆様へ、すり傷(擦過傷)を早くきれいに治すためのマニュアルを作成しました。参考にしていただくと幸いです。 |
---|
すり傷の治療経験
すり傷治療症例3
概要 | おでこ、上まぶた、下まぶたのすり傷。麻酔クリームを塗布後30分してから処置を始めました。受傷から時間が経っていて、白っぽい膜状のフィブリンが析出していたので、積極的に除去しました。生食を垂らしながら、ブラシを掃くように動かして、微小な汚れをこすり落とすと、思った以上に落ちました。 |
---|
治療法
要点 | すり傷から汁が出てきます。汁はリンパ液でフィブリンを含むので、フィブリン膜ができます。汚れはこのフィブリン膜の下にあるので、積極的に除去してください。 |
---|---|
処置名 | 創傷処理 |
費用 | 保険診療 |
合併症 | 赤みや茶色になる炎症性色素沈着の発生 テカった瘢痕の残存 |





すり傷治療症例2
頬部のすり傷と切り傷。同じ場所にありますが、処置可能です。
要点 | お子さんは怖がらせないように、処置のときの痛みを完全になくすことがポイントになります。 |
---|---|
前処置 | 痛みを感じないように麻酔クリームのODTを行うこと |
処置名 | 創傷処理 |
費用 | 保険診療 |
合併症 | 赤みや茶色になる炎症性色素沈着の発生 テカった瘢痕の残存 |





すり傷治療症例1
頬部広範囲のすり傷と眉毛の切り傷。
要点 | ダーモスコープで皮膚表面を拡大してみると、細かい粒がたくさん付着しています。皮膚にめり込んでいるので、水で軽く洗ったくらいでは落ちません。 麻酔クリーム塗布後、生理食塩水を流しながら、ブラッシングしたあと、拡大してみると、付着物はほぼ除去できています。切り傷は創縁切除後に真皮縫合で閉鎖しました。 処置3日後には上皮化しています。異物が付着していないと、治りがすごく早いことにしばしば驚かされます。 やや深かった部分は炎症後色素沈着が発生しています。UVケアと保湿をしっかり行い、徐々に改善しました。 |
---|---|
処置名 | 創傷処理 |
費用 | 保険診療 |
合併症 | 赤みや茶色になる炎症性色素沈着の発生 テカった瘢痕の残存 |
すり傷の原因・病態
2つのメカニズム
原因 | 机の角など何かが強く当たるとか、鋭い刃物で切れるとか機械的な原因 熱や有機溶媒、酸アルカリなど化学的な原因 |
---|
キズの表面
表面 | すり傷と切り傷では、まず、皮膚損傷の面積が異なります。 すり傷は面で、切り傷は線で生じます。 |
---|
キズの深さ
深さ | 血が出る場合は、真皮まで損傷が及んでいます。 血が出ない場合は、表皮のみです。通常、損傷の深さは均一ではありませんので、浅い部分や深い部分が混じっている状態です。 |
---|
治りが悪くなる原因
皮ふ組織の挫滅で末梢血液循環が悪くなると治りが悪くなる
悪化原因 | 机の角など何かに強く当たると、皮膚が押し潰された状態になります。これを挫滅と言います 挫滅した状態で、皮膚が切れてしまうと、創縁の皮膚は弱く、脆くなっています。 つまり、毛細血管がダメージを受けて、血液循環が悪く、治りが良くない状態になります。 |
---|
すり傷治療のポイント
ミクロの汚れを除去すること
重要 | すり傷をきれいに治したいとき、湿潤環境も大切ですが、その前にもっと大切なことがあります。 ⇒それは表面の細かい汚れをブラシで落とすことです。 |
---|

治療 | ◎接触型皮膚拡大鏡(ダーモスコープ)ですり傷の表面を拡大してみると、小さな砂粒、金属片、アスファルト片など汚れが多数付着しています。 ◎これは水道水で洗うだけでは、なかなか落ちません。皮膚表面の表皮が剥がれて、真皮表層に汚れがくい込んでいるからです。 ◎ブラシで積極的に掻き出して、落とすことが絶対必要です。 ◎でも、痛みがありますから、麻酔クリームや麻酔注射が必要ですので、病院に行きましょう。 ◎自己責任で、痛みを伴いますが、ご自分で新しい歯ブラシを使って、すり傷をきれいにしようと、努力なさる方は止めません。 |
---|
すり傷のアフタケア
傷跡を早く治すためのこつ
炎症を最小限に食い止めること
要点 | これがきれいに治るポイントです。 けれども、しばらく、赤みが残ります。これは炎症ではなく、表皮が薄くなったため、血液が流れている真皮が赤く透けて見えている状態です。 メラニン色素が少なくなり、紫外線に対して、弱くなっていますので、赤みがなくなるまで、UVケアは必須です。 切り傷のあとにはテーピング、すり傷のあとには日焼け止めが最適でしょう。 自験例で保険適応外使用にはなりますが、皮膚潰瘍治療外用薬のアクトシン軟膏が表皮角化細胞を増殖させる作用がありますので、表皮が早く回復して、赤みが早く取れてくる印象があります。 |
---|
傷跡の治りが遅い場合
対処 | 炎症が長引く=色素沈着や肥厚性瘢痕の発生。 炎症後色素沈着や炎症の赤みには亜鉛やビタミンCの内服がよいです。 厚みが薄い肥厚性瘢痕にはステロイド徐放テープのエクラプラスターを貼付すると効果があります。 厚い肥厚性瘢痕には、テープだけだと効果が少ないので、痛みはありますが、ケナコルト注射が適応になります。 |
---|