「しわにはボトックス」とよく言われていますが、ボトックスはアラガン社の商標名です。正式名称ボツリヌストキシン(略称ボツリヌス)と呼びます。ボトックスとボトックスビスタの製剤内容の違いはありません。使用目的(保険か、自費か)および、取扱っている製薬会社の違いです。世界で使われているボツリヌストキシンをご紹介します。
海外 液状型 |
イノトックス 韓国 メディトックス社 最初から溶けているタイプ。溶解しなくていいので、作用強度にむらがないことが期待される。アラガン社が世界販売権を獲得。次世代ボツリヌス。 |
海外 タンパク最小型 |
ゼオミン ドイツ メルク社 ボトックスで抗体ができて効果が少ない方に有効な可能性がある。 |
海外 従来型 |
リジェノックス 韓国 バイオメド社 持続は5,6ヶ月のことが多く、効き目が良い。 |
国内 厚労省認可 |
ボトックス グラクソ・スミスクライン社 持続時間は3,4ヶ月のことが多い。 適応:眼瞼痙攣、重症多汗症、痙性斜頸など |
国内 厚労省認可 |
ボトックスビスタ アラガン・ジャパン社 持続時間は3,4ヶ月のことが多い。 適応:眉間と目尻しわ |
作用原理
筋肉を動かす運動神経や、汗などの分泌を促す交感神経のシナプスから放出される。アセチルコリンの遊離をブロックすることによって、効果作用が発現します。
作用範囲
注射した周囲1cmの範囲で作用が発現しますので、約1cm~2cmおきに注射します。
適応部位
しわ(眉間、おでこ、目尻、オトガイ部)、えら(咬筋)、多汗症、皮脂過剰分泌(にきび)、眼瞼けいれん(⇒手術で改善できるようになりました)、首しわ(広頚筋)など
★眼瞼けいれんでは保険適応のボトックス治療が受けられます(当院では保険適応のボトックス治療は行っていません。自費でボツリヌストキシン注射を行うか、ミューラー筋を瞼板から剥離するADM手術を行います)
★多汗症で重症の場合は保険適応のボトックス治療(片側50単位x2、持続は3,4ヶ月です)が受けられます(当院では保険診療では、プロ・バンサインの内服をお勧めしています。内服が続けられない場合は、自費でボツリヌストキシン注射を行います。片側20単位から30単位で効きます。持続は5,6ヶ月です)
★ボトックスビスタの認可された適応部位は眉間と目尻だけです。作用機序は同じなのに、部位ごとに適応されるとは、おかしな話です。
経過
注射後、2,3日してから、筋肉が動かなくなったり、汗が出なくなったりする効果が徐々に出てきます。約2週間で効果が最大になります。この時、効果が不十分である場合は、追加注射を行うことができます。その後、4,5か月で効果が弱くなってきます。ボツリヌスの効果がなくなっても、半年間 筋肉を動かさないことによって、大きなしわは浅くなることが期待されますが、通常、筋肉の運動や汗の分泌は元に戻ります。
効果
効き目には個人差があります。効きやすい方は半年以上効いていいる方もいらっしゃるのですが、効きにくい方は3,4ヶ月で切れてくる場合もあります。一般的に最新のボツリヌスの方が効き目が良い印象があります。
”院長は、ボツリヌスが効きにくい体質で、ボトックスやリジェノックスはほとんど効きませんでしたが、イノトックスは効きました。でも3,4ヶ月です。”
リスク・副反応
1.一番多いのが皮下出血です。⇒当院では目尻で発生したことがありますが、小範囲でした。眉間では経験がありません。
2.効き過ぎて、おでこの場合、不自然に眉毛の外側が上がってしまうとか、まぶたが重く感じる時(眼瞼下垂)があります。目尻では動きがなくなり、能面のように張り付いた感じになる。⇒当院でも経験がありますので、ご心配の方には、はじめは、10単位を5単位にするなど、少なめの投与量をお勧めしています。そうすれば、少し動きを残すことができます。
3.ボトックスのインタビューフォームによると、意外に倦怠感が多い。悪心や頭痛を感じることあります。眼瞼けいれんや眉間シワでは、目の異常感、流涙増加、眼瞼浮腫、角膜びらん、複視(二重に見える)、霧視。異常を感じたら、すぐにお知らせください。⇒当院では経験ありません。
種類(XCはキシロカイン入り)
ジュビダームビスタウルトラXC
ジュビダームビスタウルトラプラスXC
ジュビダームビスタボリューマXC
作用原理
ヒアルロン酸は関節の潤滑油として生体で作られている物質で、手関節によくできる「ガングリオン」というしこりを吸引すると出てくる粘性がある透明な物質が天然のヒアルロン酸です。普通のヒアルロン酸では、すぐに吸収されてしまうので、美容で使用しているヒアルロン酸は架橋といって、分子間を繋いで、丈夫にして、吸収が遅くなるように加工されています。加工の程度によって、吸収が早いものから非常に遅いものまでいろいろな種類があります。
作用範囲
注入した部位のボリュームがアップして、膨らみます。吸収が遅くて、硬いヒアルロン酸は骨の上や筋肉の下など深く注入します。一方、吸収が早くて、柔らかいヒアルロン酸は皮内や皮下直下に注入できます。
経過
徐々に生体に分解吸収されてきますが、1,2年と非常に遅いものから、3ヶ月と早いものまでいろいろあります。
リスク・副反応
毛細血管穿刺による皮下出血:1,2週間で自然に引いてきます。⇒当院でも経験があります。運が悪いと発生します。不可避ですので、お化粧で隠していただきます。
動脈塞栓:鼻翼や眉間の皮膚壊死、重篤な失明が、韓国や日本から報告されており、注意喚起されています。⇒当院では、動脈を穿刺しない方法で施術していますので、経験ありません。
静脈塞栓:皮膚のうっ血が報告されています。⇒当院では経験がありません。