そばかす(雀卵斑)とは?
そばかすは、主に眼瞼周囲・鼻・頬・口唇に現れる左右非対称の 境界が明瞭な小さいな褐色斑です。10代~30代の女性に多く、 女性ホルモン・紫外線・摩擦などで悪化すると考えられています。
- 見え方
- 薄い〜中等度の茶色。くっきりした斑点状に多発することが多い。
- 好発部位
- 眼瞼周囲、鼻、頬、額、口唇。非対称、不規則に出やすい。
- 年齢層
- 10〜30代女性に多いが、男性や他年代でも起こり得る。
- 自覚症状
- 痛みやかゆみは通常なし。見た目の多発斑点状小色素斑が主訴。
- 炎症後色素沈着や肝斑など他のシミと混在していることも多い。
- こすり洗い・摩擦や、不適切な強い治療で悪化することがある。
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そばかすの原因(最新知見)
そばかす(雀卵斑)は遺伝素因に紫外線(UV)応答が重なって発現・増強します。病理学的には メラノサイト数は増えず、基底層を中心に角化細胞内メラニンが増えるタイプの色素異常です1)2)。
1) 遺伝的要因(MC1Rを中心に)
- MC1R変異は古典的かつ頑健な関連で、「そばかすの主要遺伝子」として多数報告があります3)。
- アジアを含む集団でも、MC1Rの多型とfrecklingの関連が示されています4)。
- 皮膚色や光感受性に関与するOCA2/HERC2、IRF4、BNC2、TYR、SLC24A4/45A2なども関連(集団差あり)5)6)。
2) 紫外線とシグナル経路
- UV照射により角化細胞のPOMC由来α‑MSHが増え、MC1R→cAMP→MITF経路が活性化してメラニン合成が亢進します(DNA修復にも影響)7)。
- この反応は「メラノサイト数の増加」ではなく、メラノソームの大きさ・数や輸送の変化によって色調が濃く見えることが特徴です1)2)。
3) 遺伝 × 環境の相互作用
- 小児期からの日焼け歴・屋外活動量と、MC1R/OCA2等の多型が組み合わさることで、そばかすの出やすさ・濃淡が規定されます7)。
4) 他の「しみ」との病態の違い
- そばかす(ephelides):遺伝素因が強く、日光で濃くなる。メラノサイト数は増えないが、メラニン合成・分配が亢進。
- 日光性色素斑(solar lentigines):光老化に伴う獲得性病変で、表皮過形成やメラノサイト数の変化を伴うことがある7)8)。
臨床への示唆:再発・季節変動を抑えるには、広域スペクトラムの遮光と摩擦・炎症対策が重要です。治療選択時は、そばかすと日光性色素斑の病態差を踏まえ、IPL/レーザーの組み合わせを最適化します。
参考文献
- 1) Dermatology Advisor: Ephelides (2019) — メラノサイト数は増えず、基底層メラニン増加。
- 2) University of Utah Derm: Ephelides (2022) — メラノソーム増加とUVによる濃化。
- 3) Bastiaens et al. The melanocortin‑1 receptor gene is the major freckle gene. (2001)
- 4) Yamaguchi et al. MC1R variants and freckling in Japanese. (2012)
- 5) Endo et al. GWAS in Japanese females identifies fifteen novel skin-related trait associations. Sci Rep (2018)
- 6) Visconti A et al. Pigmentation/tanning GWAS loci(OCA2/HERC2, IRF4, BNC2…). Nat Commun (2018)
- 7) Praetorius et al. Sun‑induced freckling: ephelides and solar lentigines. (2014) — 病態モデルとUV応答。
- 8) Medscape: Lentigo overview — 日光性色素斑の病理学的所見。
※ 最新レビューを優先しつつ、古典的エビデンスも併記しています。
当院で行うそばかす治療法
1) 光治療(IPL/フォトフェイシャル)
複数波長の光で表層のメラニン色素を焼灼、浅層のそばかすが脱落します。ゴマ粒大のかさぶたで、ダウンタイムが少なく、初めての方にも選ばれやすい治療です。
特徴・回数の目安
3~5回、月1回間隔での照射を推奨。
2) ピコスポット照射
光治療後に薄く残った深いそばかすのメラニン色素に対してピコ秒レーザーの高出力でアプローチ。痂皮形成し、1週間前後で脱落します。反応後に一時的な炎症性色素沈着を生じることがあります。
特徴・回数の目安
1回~2回。部位・濃さにより個人差あり。
3) ピコフラクショナル照射
光治療とピコスポットで残った異常なメラノサイトや真皮に対してピコ秒レーザーの高出力でアプローチ。異常なメラノサイトを破壊し、真皮を整え、全体的に徐々に薄くなってきます。結果が出るまでに時間がかかります。一時的に点状出血を生じることがあります。
特徴・回数の目安
3,4ヶ月毎。部位・濃さにより個人差あり。
4) 内服・スキンケア
炎症性色素沈着防止のため抗酸化力をアップさせる亜鉛やビタミンCを内服、サングラス装着・日焼け止め塗布・保湿の最適化を併用。
5) 診断サポート(画像解析)
治療の区切り毎にアンテラ3D等で色調・反応性を評価し、治療計画を最適化します。
治療原理の深堀り
まずは「色」を狙う治療
色がはっきりしたそばかすには、まず、浅いメラニン色素にブロードバンドの光治療(IPL)で狙います。痂皮形成のダウンタイムは1~2週間で、回数を重ねることで表層から深層のメラニン色素が徐々に脱落し、全体の色調が整います。さらに、光治療でも届かない深いメラニン色素には、ピンポイント波長のピコ秒レーザー(532nm)で狙います。深いメラニン色素だけでなく、異常なメラノサイトも破壊できるので、最終段階でお勧めですが、1か所ずつスポット照射するため、光治療より高額になります。
ゆっくり薄くする治療(ピコフラクショナル)
ピコフラクショナルは、レーザーを非常に細かい目に見えない点に分けて照射し、表皮深層~真皮浅層に極小の機械的破壊領域(LIOB)を作り、 肌の入れ替わり(ターンオーバー)と基底層のリモデリングを促す治療です。
即効で色が抜けるというより、3か月ほどかけて、光治療やピコスポット照射後に残った深いそばかす跡のくすみ、細かな色むらが、ゆっくり、少しずつ目立たなくなっていくのが特徴です。
この効果のカギは、肌の浅い部分にできるごく小さな破壊創です。ピコ秒レーザーは熱ではなく音響衝撃波によって、異常なメラノサイトが破壊され、真皮の血管網が整い、肌質が改善します。
ポイント:はっきりした斑点はスポット照射で、全体の透明感や質感はフラクショナルで整える――といった併用設計が効果的です。紫外線対策・保湿・摩擦回避で再発やムラを抑えます。
治療の理論背景(医療関係者向け)
1) 色素標的とフラクショナルの役割分担
- スポット系(730/532/694nm ピコ秒等):メラニン選択性による フォトメカニカル優位の色素破砕。雀卵斑で短期のクリアランスを得やすい。[A][B]
- ピコフラクショナル(1064/532nm + MLA/DOE):LIOB/LICにより表皮~真皮浅層の微小損傷→創傷治癒→基底層リモデリング・メラニン産生低下・メラニン排出。改善は遅発的(月単位)で、色むら・毛穴・質感に寄与。[C][D][E]
- LIOB(Laser-Induced Optical Breakdown):ピコ秒レーザーの高いピークパワーで局所的にプラズマ化が起こり、表皮〜上真皮に微小空洞(マイクロキャビティ)が形成される現象。熱変性がほとんどなく、周囲組織の損傷は最小限。
- LIC(Laser-Induced Cavitation):LIOBで生じた空洞内でキャビテーション(膨張・収縮)が起こり、微細な物理刺激が加わる。この刺激が創傷治癒を誘導し、基底層のメラノソーム排出やコラーゲン再構築が進む。
2) 時間経過:即時破砕 vs 遅発排出
- ピコフラクショナルは即時の顆粒破砕が主目的ではなく、微小空洞/キャビテーションと周囲組織の反応でメラノソームの排出と基底層の再構築(異常なメラノサイトの破壊)を進める。臨床的には1~3か月で視覚的改善が進行する所見が総説・観察研究で共有されています。[B][D][E]
- フラクショナル・ピコ秒では、LIOB/LICによる物理的リモデリング効果が、色素病変の遅発改善(1〜3か月)や肌質改善に寄与します。
3) 施術設計(アジア人皮膚を前提)
- 初回~中盤:色の強い斑点はスポット系で反応閾値を超えさせる。
- 全体最適:フラクショナル・ピコ秒を低~中出力で複数回、PIH回避を優先しつつ 角層~基底層のリモデリングを段階的に誘導。[F][G]
- 維持:亜鉛やビタミンCなどによる抗酸化力アップ、サングラスやサンスクリーンによる遮光・摩擦回避・外用適応(HQ/レチノイドの適応は個別判断)。
参考文献(抜粋)
- [A] Huang Y, et al. Successful Treatment of Freckles Using a 730-nm Picosecond Laser: a prospective study. Clin Cosmet Investig Dermatol. 2024, 27(17)3027-3032.中国人患者での雀卵斑に対する有効性・安全性。✅️PubMed
- [B] Zhou Y, et al. An update on fractional picosecond laser treatment: histology and clinical applications. Lasers Med Sci. 2023, 38(1):45. LIOB/LICと臨床適応、遅発的改善の概説。✅️PubMed
- [C] Tanghetti EA. Histology of skin treated with picosecond alexandrite and a fractional lens array. Lasers Surg Med. 2016, 48(7):646-52.LIOBと周囲組織反応の病理。レビューでも再掲。✅️PubMed
- [D] Liu C, et al. Characterization of picosecond laser-induced optical breakdown(LIOB) using harmonic generation microscopy(HGM). Lasers Surg Med. 2023, 55(6):561-67.1064 nm P-MLA後の微小損傷を生体で可視化。✅️PubMed
- [E] Balu M, et al. In vivo multiphoton microscopy of picosecond-laser-induced optical breakdown in human skin. Lasers Surg Med. 2017, 49(6):555-62.時間経過での組織反応と外観改善。✅️PubMed
- [F] Dai R, et al. Comparison of 1064-nm Nd:Yag picosecond laser using fractional micro-lens array(MLA) vs ablative fractional 2940-nm Er:YAG lasedr for the treatment of atrophic acne scar in Asians: a 20-week prospective, randomized, split-face, controlled pilot study. Front Med (Lausanne). 2023, 16(10).フォトメカニカル優位の利点、遅発改善の示唆。✅️PubMed
- [G] Le TVT, et al. Fractional 1064 nm ps Nd:YAG picosecond laser for Asian skin rejuvenation: clinical efficacy and the role of photoprotectiver behaviours. Lasers Med Sci. 2025, 40(1):209.安全性と月単位の改善。✅️PubMed
- [補] Yeh YT, et al. Histology of ex vivo skin after treatment with fractionated picosecond Nd:Yag laser in high and low-energy settings. J Cosmet Laser Ther.2020, 22(1):43-47.✅️PubMed
治療の流れ
1)診察・肌診断(アンテラ3D)
まず肌解析装置アンテラ3Dで、炎症性色素沈着(PIH)や肝斑の合併の有無・分布・反応性を評価します。 そばかす単独か、複合病変かを見極め、照射範囲と初期設定の安全域を決めます。
2)治療方針の決定
- 目尻の肝斑領域に強い出力が許容できるかを判断し、光治療(IPL)の出力・パルス幅・フィルタを最適化します。
- そばかす優位か、肝斑・PIHを伴う混在型かで、スポット照射(ピコ)/全顔の光治療の配分を設計します。
3)事前準備(栄養・併用療法)
炎症後色素沈着を抑える方針で、亜鉛+ビタミンCの補助(内服)を行います。
肝斑を伴う場合は、トラネキサム酸の併用や出力・間隔の調整を検討します(光またはレーザー設計に反映)。
4)照射 → 再評価(アンテラ3D)
- そばかす主体:まず光治療を3回(目安)実施 → アンテラ3Dで再評価。
- 再評価の結果、光治療を継続するか、ピコレーザー(スポット)や ピコフラクショナルへ移行/追加するかを決定します。
5)アフターケア・日焼け止め指導
- 紫外線対策:SPF/PA表示のある日焼け止めを毎日使用し、外出時は2〜3時間ごとに塗り直し。
- スキンケア:摩擦回避・十分な保湿。反応部位のかさぶたは無理に剥がさない。
- メイク再開:施術内容により異なります(指示に従ってください)。
- 注意症状:強い赤み・腫れ・水疱・遷延するヒリつきがあればご連絡ください。
医療者向けメモ
- 混在病変では肝斑閾値回避を優先。目尻部はとくに累積熱量・パルス幅の管理を厳密に。
- PIHハイリスク例は、出力・密度・パス数を控えめにし、間隔を長めに設定。
- フラクショナル・ピコ秒は即時破砕よりLIOB/LIC→リモデリングを狙い、1〜3か月の遅発改善を見込む設計に。
治療期間・回数・費用
そばかすは、紫外線対策とスキンケアを土台に、光治療やピコレーザーを段階的に組み合わせます。個々の肌質や合併(肝斑/PIH 等)により最適回数と間隔は変わりますが、下記が当院の目安です。
期間の目安
- 初期改善(光治療3回を中心):3ヶ月
- 質感・色むらの底上げ(必要に応じピコ併用):3ヶ月~6ヶ月
- 維持期(内服・外用+生活ケア):6ヶ月以降
回数・間隔の目安
- 光治療(IPL):3回/1ヶ月間隔
- ピコスポット(濃い斑点に追加):1〜2回/初回から4ヶ月後
- ピコフラクショナル(全体の透明感):3回~/初回から6ヶ月後~
- 栄養サポート(亜鉛・ビタミンC):継続(3ヶ月毎評価)
費用の目安(税込)
- 光治療(IPL)両頬:20発¥11,000 /1回 目安3回毎に評価/1ヶ月間隔
- ピコスポット:¥18,700/10か所〜84,700円/50か所
- ピコフラクショナル 両頬:¥19,700~¥35,200(麻酔料込)/1回
- MaZiCu・αリポビタC・TAXクリーム:¥8,150
※ 赤み・乾燥・痂皮・一時的な色素沈着などの反応が出やすい方は、間隔延長や一時休止で安全を優先します。正式料金は下記の「美容医療料金一覧」をご確認ください。
治療後の経過と注意点
1)赤み・かさぶた・色素沈着の可能性
光治療やピコレーザー後は、かさぶた(痂皮)が生じる場合と生じない場合があります。 メラニンの深さや皮膚の厚みにより反応が異なるため、かさぶたができなかった=効果がないということではありません。 後から徐々に薄くなる経過が多く見られます。
- 光治療(IPL):細かいゴマ粒大の痂皮になりやすい
- レーザー:ややべったりとした大きめの痂皮になりやすい
- 経過:およそ1週間前後で自然に剥がれてきます
- 注意:こすらない/無理に剥がさない(摩擦はPIHの原因)
2)紫外線対策の重要性
夏場や屋外スポーツ(ランニング・テニス・ゴルフ等)をよく行う方は特に注意が必要です。 ベースのメラニンが濃いと、光治療やピコレーザーの反応が弱くなります。
- 施術前~施術期間:サングラス・広域スペクトラムの日焼け止めでUVケアを徹底
- 季節の調整:強い日差しの時期は避け、秋以降に施術する選択も検討
- 塗り直し:外出時は2~3時間ごとを目安に塗り直し
3)保湿(内側と外側の両面から)
乾燥は炎症の原因となり、メラニン産生を誘導しやすくなります。日々の保湿ケアを心がけてください。 体内からは食生活の見直しも役立ちます。
- スキンケア:摩擦を避け、低刺激の保湿剤を丁寧に
- 食事:オメガ3脂肪酸を含む 亜麻仁油・青魚(さば/さんま/いわし)の摂取を意識
- オメガ3は保湿関連たんぱく質の発現を促すことが示されています
4)刺激回避
強い摩擦は炎症を招き、メラニンを誘導しやすくなります。洗顔やクレンジングはやさしく行ってください。
- 洗顔:たっぷりの泡でこすらず洗う/ぬるま湯でやさしくすすぐ
- タオル:押さえるようにそっと水分を取る
- メイク・スキンケア:アルコールや高刺激成分は施術直後は避ける
よくある質問(FAQ)
⏳️何回くらいで薄くなりますか?
表皮が薄く、そばかすのメラニン色素が浅い場合は、早く痂疲(かさぶた)となり脱落します。
表皮が厚く色素が深い場合は、光治療の出力を上げたり、ピコレーザーを併用しないと痂疲ができず、改善が遅くなります。
したがって、ケースバイケースです。1回目からたくさんかさぶたができて、薄くなる場合もあれば、3回照射しても、少ししか、薄くならない場合もあり、正直なところ、照射してみないと、脱落反応は予測できません。
けれども、改善を早めるために、皮膚のターンオーバー速度を高めることが大切なことは確かです。そのためには食事やサプリメントのタンパク質やビタミンA、亜鉛に着目してください。
⏳️痛みはありますか?
光治療は輪ゴムで軽く弾かれるような刺激、ピコレーザーはやや鋭いチクっとした痛みを感じる方が多いです。痛みが心配な場合は、麻酔クリームや冷却で軽減できます。
⏳️再発しますか?
遺伝的にそばかすが出やすい肌質の場合、紫外線を浴びると再び色素が目立ってくることがあります。再発予防には、UVケア(サンスクリーン・帽子・日傘)と定期的なメンテナンス治療が有効です。
⏳️メイクはいつからできますか?
治療部位に保護テープを貼った場合は、その部分を避けてメイク可能です。
テープが不要な場合、翌日から軽いメイクが可能ですが、クレンジングはやさしく行ってください。
😊 お礼
最後までお読みいただきありがとうございます。
寺田院長は、シミ治療を通して、皮膚だけでなくカラダ全体を整えることを目標に掲げています。
お肌だけでなく、カラダ全体の抗酸化力・抗糖化力を高めて、毎日を前向きに過ごしましょう。