肝斑とは?
肝斑は、主に頬・額・口まわりに現れる左右対称の 境界がややぼやけた褐色斑です。30〜50代の女性に多く、 女性ホルモン・紫外線・摩擦などが関与すると考えられています。
- 見え方
- 薄い〜中等度の茶色。にじむような広がりで、点状よりも面状のことが多い。
- 好発部位
- 頬骨部、額、上口唇(口ひげ様)、下顎。左右対称に出やすい。
- 年齢層
- 30〜50代女性に多いが、男性や他年代でも起こり得る。
- 自覚症状
- 痛みやかゆみは通常なし。見た目の色むらが主訴。
- 炎症後色素沈着や雀卵斑(そばかす)など他のシミと混在していることも多い。
- こすり洗い・摩擦や、不適切な強い治療で悪化することがある。
症例写真集
以下の症例写真は、 医療広告ガイドラインに基づく限定解除事項を確認のうえご覧ください。
肝斑の原因
肝斑の発症には女性ホルモンの変動が深く関わっており、さらに紫外線や摩擦などの外的因子が関与すると考えられています。 ただし、それぞれの要因の本質的な役割は異なります。
女性ホルモンと肝斑
女性ホルモン(特にエストロゲン)はメラノサイトの活性化に関与し、肝斑の色調変化を左右します。 妊娠・出産期にはエストロゲン・プロゲステロンの分泌が増加し、肝斑が悪化することが古くから知られています。
- 経口避妊薬(ピル)服用中に肝斑が出現・増悪する例も報告あり。
- 閉経後に色素が薄くなることからも、女性ホルモンの影響は確実と考えられます。
紫外線・摩擦の影響
紫外線や摩擦は、皮膚で炎症や酸化ストレスを引き起こします。 本来、抗酸化システムが働くはずですが、それが十分に機能しない場合、 代償的にメラニン産生が誘導されます。
- 日焼け止めや遮光物の使用で、肝斑の増悪を防ぎやすくなる。
- 洗顔やメイク落としのこすり過ぎは慢性的な炎症刺激となる。
参考文献
- ① Ortonne JP, Arellano I, Berneburg M, et al. A global survey of the role of ultraviolet radiation and hormonal influences in the development of melasma. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2009;23(11):1254-1262. ✅️PubMed
- ② Espósito ACC, Cassiano DP, da Silva CN et al. Update on Melasma-Part I: Pathogenesis. Dermatol Ther (Heidelb). 2022; 12(9):1967-1988. ✅️PubMed
- ③ Grimes PE. Melasma. Etiologic and therapeutic considerations. Arch Dermatol. 1995;131(12):1453-1457. ✅️PubMed
- ④ Sheth VM, Pandya AG. Melasma: a comprehensive update: part I. J Am Acad Dermatol. 2011;65(4):689-697. ✅️PubMed
- ⑤ Kwon SH, Na JI, Choi JY, et al. Melasma: Updates and Perspectives. Exp Dermatol. 2019;28(6):704-708. ✅️PubMed
肝斑と他のシミの違い
肝斑は色調・発生原因・治療アプローチが他のシミと異なります。 レーザー治療が万能というわけではなく、むしろ内科的アプローチが主体になる点が特徴です。
肝斑
- 色合い: 褐色〜灰褐色、境界やや不鮮明、左右対称が多い。
- 原因: 女性ホルモン変動(妊娠・閉経・ピル等)、紫外線、摩擦など。
- 治療法: トラネキサム酸・ビタミンC内服、ハイドロキノン外用、低出力レーザー(ピコトーニング)など。
他のシミ(例:日光性色素斑)
- 色合い: 境界明瞭な濃褐色、左右非対称で大きさや形も様々。
- 原因: 長年の紫外線曝露、加齢、遺伝的要因など。
- 治療法: Qスイッチレーザー、ピコレーザー、IPLなど光・レーザー治療が中心。
参考文献
- ① Grimes PE. Melasma: Etiologic and therapeutic considerations. Arch Dermatol. 1995;131(12):1453-1457. ✅️PubMed
- ② Sheth VM, Pandya AG. Melasma: a comprehensive update: part I. J Am Acad Dermatol. 2011;65(4):689-697. ✅️PubMed
- ③ Kwon SH, et al. Melasma: Updates and Perspectives. Exp Dermatol. 2019;28(6):704-708. ✅️PubMed
当院の肝斑治療方法
肝斑は炎症性色素沈着(PIH)の合併が多く、まずは抗酸化力の底上げと 刺激/炎症の鎮静を優先します。治療は段階的・慎重に行い、レーザートーニングは最終段階で検討します。
① 内服(トラネキサム酸・亜鉛・ビタミンC)
- トラネキサム酸(TXA):プラスミン経路を抑え、炎症誘導性メラニン産生をブロック。
- 亜鉛:色素代謝・創傷治癒・皮膚バリアの補助。欠乏が疑われる場合に適正補充。
- ビタミンC:抗酸化サポート・チロシナーゼ抑制の補助。
② 外用(TAホワイト/ハイドロキノン)
- トラネキサム酸クリーム(TAホワイト):炎症性経路を穏やかに抑制。
- ハイドロキノン:1.9%は刺激を抑えた維持用、4%は短期集中で色調を整える目的。
- レチノイド等との併用は刺激性を見ながら段階導入。
③ 施術&注射(エレクトロポレーション/TXA皮内注射)
- エレクトロポレーション:トラネキサム酸やビタミンCを角層バリアに依存せず導入。
- TXA皮内注射:局所の炎症性シグナルに的を絞ったアプローチ(部位選択・間隔を厳密管理)。
- 内服・外用の反応を見ながら補助的に追加します。
④ レーザートーニング(最終段階)
- 低出力・短パルスで刺激を最小化し、数回に分けて均一化を図ります。
- 肝斑単独への強出力照射は禁忌。合併する日光斑・ADMは別プロトコルで対応。
- 間隔目安:2〜4週。反応が過敏な場合は間隔延長や中止判断。
⑤ 点滴療法(ビタミンC/グルタチオン)
- ビタミンC点滴:抗酸化・抗炎症サポート。内服で頭打ちの方の底上げに。
- グルタチオン点滴:細胞内の酸化還元(redox)バランスを整えるレドックス補助として働きます。 自ら酸化されながら活性酸素を中和し、ビタミンCやEと協力して抗酸化防御を維持します。
- 既往歴・採血を踏まえて安全域で設計します。
当院の基本方針
- まずPIHを鎮静し、刺激/摩擦/紫外線を徹底管理。
- 内服・外用・(必要に応じて)点滴で抗酸化力を底上げ。
- 十分に安定してから低出力レーザートーニングを最終段階で慎重に追加。
治療期間・回数・費用
肝斑は炎症鎮静と抗酸化の底上げを優先し、段階的に強化します。 個々の肌質・合併(PIH/日光斑/ADM など)により最適回数と間隔は変わりますが、下記が当院の目安です。
期間の目安
- 初期安定化(内服+外用±点滴):8〜12週
- 色調均一化(施術・注射の適宜追加):12〜24週
- 維持期(外用+生活ケア):継続
回数・間隔の目安
- 内服(TXA/亜鉛/ビタミンC):毎日(8〜12週で評価)
- 外用(TA/ハイドロキノン):毎日〜隔日(刺激に応じ調整)
- エレクトロポレーション:2〜4週間隔
- TXA皮内注射:3〜4週間隔・部位限定
- レーザートーニング:2〜4週間隔(最終段階のみ)
- 点滴(VC/グルタチオン):1〜4週間隔(必要時)
費用の目安
-
内服セットトラネキサム酸(100錠)+亜鉛(90錠)+αリポVC(120錠)¥8,150円
-
TAホワイトトラネキサム酸クリーム(1日2回塗布)¥2,750円
-
ナノHQ 1.9%低刺激・導入向け¥3,300
-
ナノHQ 4%短期集中で色調調整(パッチ推奨)¥2,200
-
エレポ導入トラネキサム酸 or ビタミンC(全顔1回)¥11,000円(初回)~14,300円
-
TXA皮内注射限定部位・少量分割¥7,700円(麻酔料込)
-
レーザートーニング低出力(全顔1回)※最終段階のみ¥9,900~
-
ビタミンC点滴抗酸化サポート¥6,600円
-
グルタチオン点滴レドックス補助¥4,950円〜¥6,600円
再発予防とホームケア
肝斑は再発しやすい色素疾患です。治療で改善しても、日常の紫外線・摩擦・生活習慣の影響で再び色調が濃くなることがあります。 当院では3つのケア軸を組み合わせて、色調の安定と再発予防を目指します。
① 紫外線対策
- SPF30以上・PA+++以上の日焼け止めを毎日使用。
- 屋外だけでなく室内・曇天・冬季も習慣化。
- 日傘・帽子・サングラスなど物理的遮光も併用。
② 摩擦・刺激回避
- 洗顔・クレンジングはやさしく短時間で。
- タオルは押さえるように吸水(こすらない)。
- 合成ブラシや硬いパフの使用は控え、柔らかい素材へ。
③ 栄養・生活習慣
- 抗酸化食品(ビタミンC・E、ポリフェノール)を毎日の食事に。
- タンパク質を十分に摂り、皮膚の再生力をサポート。
- 亜鉛は抗酸化酵素SOD(スーパーオキシドディスムターゼ)の活性中心として働き、 活性酸素の消去と色素沈着の悪化抑制に重要です。
- 睡眠不足・ストレス過多はホルモン変動を招き、肝斑を悪化させます。
当院の再発予防サポート
定期的な診察と肌画像解析(アンテラ3Dなど)で色調変化をモニタリングし、 季節や生活状況に合わせた外用・内服・施術プランを調整します。
よくある質問(FAQ)
肝斑治療を検討される方から寄せられる代表的な質問をまとめました。 診察時にはこれ以外の細かな疑問にもお答えします。
肝斑は再発しやすい疾患で、完全な根治は難しい場合があります。 ただし、適切な治療と生活習慣改善で長期的に安定した状態を維持することは可能です。
強い出力のレーザーは肝斑を悪化させる可能性があります。 当院では低出力レーザートーニングを最終段階で慎重に行います。
初期は8〜12週間の継続内服を推奨し、その後は反応や副作用の有無を確認しながら調整します。
内服薬や一部外用薬は妊娠・授乳中は使用できません。 紫外線対策や摩擦回避など、生活ケア中心の安全な方法で対応します。
亜鉛は抗酸化酵素SODの活性中心として働き、酸化ストレスを軽減します。 ビタミンCはチロシナーゼ活性抑制や抗酸化作用により、色素沈着の悪化防止に寄与します。
😊 お礼
最後までお読みいただきありがとうございます。
寺田院長は、シミ治療を通して、皮膚だけでなくカラダ全体を整えることを目標に掲げています。
お肌だけでなく、カラダ全体の抗酸化力・抗糖化力を高めて、毎日を前向きに過ごしましょう。