アトピー皮膚炎
語源
アトピーという言葉の語源は、1923年コカ (Arthur F. Coca) とクック (Robert A. Cooke)によってギリシャ語の”アトポス”(特定されない atopos - a=否定、topos=由来)から名付けられた。コカ先生はThe Journal of Immunologyの創設者で、食物アレルギー検査として脈拍テストを発表されました。
アトピー性皮膚炎とは
アトピー性皮膚炎とは、皮膚バリア機能低下により乾燥しやすく、刺激に弱い敏感肌の状態。かゆみのある湿疹がよくなったり、悪くなったりを繰り返す病態。保湿タンパク質であるフィラグリンの産生異常やアトピー素因と呼ばれるIgE抗体を産生しやすい体質がある。
治療ゴール
治療ゴールは、もちろん、アトピー性皮膚炎を完治させることです。しかし、重症化したアトピー性皮膚炎の完治は、なかなか厳しいため、重症の場合の治療ゴールは、症状を落ち着かせて、悪化させないこと。普段は忘れていられるような肌の状態になることです。
日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎治療ガイドライン
アトピー性皮膚炎の
発生原因と増悪因子
内因はIgE抗体とフィラグリン
1.IgE抗体を作りやすい体質
2.表皮角質層のフィラグリン機能低下
アトピー性皮膚炎の症状を憎悪させる外因はいろいろあります
さまざまな要因が挙げられます。
細菌
- 常在菌の表皮ブドウ球菌
かび
- 常在菌のマラセチア
ダニ
- ハウスダストの主成分。ダニアレルギーが非常に多い。
ウイルス
- イボの発生も多い。
紫外線
- 憎悪因子です。
汗に含まれる電解質
- ナトリウム
汗に含まれる微量金属
- 大豆やチョコなどにニッケルが含有されます。
アレルギー食品
- 慢性化に関連するIgGの産生は卵、乳製品、小麦粉が多い。
過剰摂取したオメガ6オイル
- 慢性炎症の原因の一つ。
トランス脂肪酸
- 慢性炎症の原因の一つ。
アトピー性皮膚炎の血液検査
TARC(ターク)
- アトピー性皮膚炎の炎症の程度を採血で調べる検査。治療効果をタークで判定できる。
- TARCは、Thymus and activation-regulated chmokine(胸腺と活動調整ケモカイン)の略で、白血球を引き寄せることができるマジカルなタンパク質=ケモカインの一つ(正式な名前はCCL17)
- タークがたくさん作られると、ヘルパーT細胞のうち、Th2細胞を病変部に誘導し、アトピー性皮膚炎に関係するIgE抗体を作らせたり、好酸球が活発になり、痒みや赤みが発生します。
- 正常値(pg/ml)
- 小児(6~12ヶ月):1367未満
- 小児(1~2歳):998未満
- 小児(2歳以上):743未満
- 成人:450未満
- アトピー性皮膚炎の重症度判定の目安(参考)
- ・成人
- 血清TARC値 700pg/ml未満:軽度
- 血清TARC値 700pg/ml以上:中等症以上
- ・小児
- 血清TARC値 760pg/ml未満:軽度
- 血清TARC値 760pg/ml未満:中等度以上
- 検査費用 3割負担で1,032円
IgEアレルギー検査(保険)
- 個別では13種類まで可能
- 花粉、真菌、ダニ、動物、食物など
- View39では、13種類の検査価格で、39種類まとめてできるオトクな検査です。
- 検査費用 3割負担で約5,000円
IgG食物アレルギー検査(自費)
- 慢性アレルギーに関係している100品目の食品に対するIgG抗体を検査できます。
- 検査費用 35,000円~50,000円
- アンブロシアから直接ご購入ください。
アトピー性皮膚炎
日常生活習慣の見直し
1.食生活
減らすべき食事
1.甘いお菓子(駄菓子、ケーキ、チョコ)
- ⇒血糖値が上がり、インスリン分泌が増えます。中性脂肪になります。
2.炭水化物(ご飯、パン、麺類など)
- ⇒血糖値が上がり、インスリン分泌が増えます。中性脂肪になります。
3.脂っこい食品(カレー、ハンバーグ、唐揚げ、中華料理、マーガリン、コーヒーフレッシュ)
- ⇒オメガ6脂肪酸やトランス脂肪酸が炎症に原因になります。
- ☆オメガ6脂肪酸の含有量が少ない食事でアトピー性皮膚炎が改善するという論文
4.牛乳、卵、小麦粉
- ⇒一般的に卵、乳製品、小麦粉に慢性アレルギーが多いです。
- ☆保険診療のIgE検査、もし必要があれば、自由診療のIgG検査(自費)を行います。
- ☆IgG検査は保険や学会で認められていませんが、IgG陽性の場合、摂取を制限すると改善する場合がありますので、悩ましいところです。
- 現在、小麦粉製品(パンや麺類)の制限(グルテンフリー)をお勧めしています。
増やすべき食事
1.タンパク質(肉、魚、卵、豆腐、納豆)
- ⇒1食あたり最低目標はタンパク質20g、1日60g。アトピー性皮膚炎の方はできれば1食40g、1日120gを目標にしたいです。
- ⇒肉と魚だと、1食あたり最低100gは食べましょう。20%がタンパク質なので、20gタンパク質が摂取できます。できれば、1食あたり200g食べてもいいです。
- ⇒卵1個ではタンパク質7g、豆腐1丁300gでタンパク質15g、
- ☆皮膚などが炎症で壊れていますから、組織を治すためには、タンパク質を食べる量を大幅に増やす必要があります。
2.オメガ3脂肪酸(さば、さんまなど魚、亜麻仁油、エゴマ油など)
- ⇒オメガ3脂肪酸には炎症を抑える作用があります。
- ⇒サバ缶やサンマ缶を活用しましょう。タンパク質とオメガ3オイルと同時摂取できます。
- ⇒オイルの場合、オメガ3は酸化しやすいので加熱してはいけません。
☆ウドズオイル 人気のオメガ3/6ブレンドオイル
- 亜麻仁だけでなく、ひまわり、胡麻、米胚芽、米ふすま、オーツ麦芽胚、オーツ麦ふすま、ココナッツオイル、月見草油、大豆レシチンから製造されています。
- カナダ製 低温圧搾、冷凍輸送、冷凍保管、遮光瓶、窒素封入を使用して、製造、輸送工程での徹底的な酸化対策を図り、高品質を保っています。
- 現在、クリニックでは販売しておりません。リンク先から直接ご購入ください。
3.ココナッツオイル(飽和脂肪酸)・MCTオイル(中鎖脂肪酸)
- ⇒飽和脂肪酸は酸化しませんので、炒め物に最適です。
- ⇒MCTオイルからはケトン体が出てきます。糖質制限を行う際に、糖に代わる新たなエネルギー源になります。
4.ビタミン・ミネラル
- ⇒ビタミンD きのこ類。とくに”きくらげ”や”干し椎茸”
- ⇒ビタミンC 柑橘類
- ⇒ビタミンB 豚肉
2.入浴
熱いお湯、長湯、洗い過ぎ注意。
- 皮膚の油=皮脂が落ちてしまうと、肌の乾燥がひどくなりますから、ご注意ください。
- お湯に浸かると、汚れは自然に流れ落ちます。湯船の中で、肌を手の平でこすり洗いするだけで、大丈夫です。ボディソープや石鹸は時々使うくらいにしておきましょう。
3.ダニ対策
お掃除、ダニ捕りマット
ダニ舌下免疫療法
ダニ抗原を希釈した舌下錠を毎日服用し、徐々に慣らしていく方法です。舌下免疫療法へのリンク
すぎ花粉症がない方、もしくは、弱い方で、ダニアレルギーがひどい方が治療対象になります。
低用量3,300JAUのミティキュアダニ舌下錠から開始し、口腔内の腫れや喉頭のイガイガ感がなければ、高用量10,000JAUのミティキュアダニ舌下錠に移行するという方法で行っています。
季節的なスギ花粉症より、ダニアレルギーの舌下免疫療法の方が副反応が多い可能性があります。
解説)
JAU(Japanese Allergy Units)とは、日本アレルギー学会により設定されたアレルゲン活性単位。「コナヒョウダニ」と「ヤケヒョウダニ」のアレルゲンエキス22.2~66.7μg/mLが含まれるものを100,000JAU/mLと定義。
アトピー性皮膚炎の注射薬
バイオ製剤(抗体)で特定の過程をブロックすることで痒みなどを改善します。
※当院では実施しておりません。ご希望の場合は、大学病院皮膚科をご紹介します。
デュピルマブ
IL-4とIL-13の活動を阻害する抗体薬。月2回皮下注。
アトピー性皮膚炎に適応
ネモリズマブ
- 1日1回内服
- デザレックス(新薬)
- ビラノア(新薬)
- ザイザル
- クラリチン
- アレジオン
- 1日2回内服
- タリオン
- アレグラ
- アレロック
- ステロイド+
- 抗ヒスタミン剤
- 配合剤
- 1日1回1錠から
- 1日3回6錠まで
- 程度によって増減
- トランサミン
- 適応症
- 湿疹性紅斑
- 炎症による赤みや色素沈着を改善
- 当帰飲子
- 補中益気湯
- 1日3回食前
- 掻爬して痂皮の周囲が赤くなり、細菌感染が発生した場合
- フロモックス、クラビットなど
- シナールは容量が少ないのでお勧めしません。
- ビタミンCは、1回1gを1日2,3回内服することをお勧めします。
- クリニックでは高容量ビタミンC点滴(自費)をご提供しています。
アトピー性皮膚炎の外用薬
☆食生活の改善に取り組みながら、外用すると治りやすくなります。何も変えなければ、塗り薬を止めるとすぐ再発します。
★保湿を行いながら、かゆみ止めを使います。
- ☆大人の方で広範囲に塗る必要がある方は混合軟膏を処方しています。
- ☆お子さんは食事やダニ対策を行い、保湿して、抗ヒスタミン剤を内服しても、痒ければ、ステロイドを塗布するという具合に、混合軟膏ではなく、保湿とステロイドを別々に使ってもらい、ステロイドの使用量を減らしています。
- ステロイドの長期使用は、皮膚が薄くなり、皮下の血管が透けて見えるようになってきます。なるべく、ステロイドではないかゆみ止めを使用するようにしましょう。新しいかゆみ止めとして、モイゼルト軟膏やコレクチム軟膏も試してみるといいです。時に灼熱感が生じるプロトピック軟膏より使いやすくなっています。
- 新しいかゆみ止め
- 剤形
- 軟膏
- 新しいかゆみ止め
- 剤形
- 軟膏
- 保湿
- ヒルドイド
- ビーソフテン
- 後発品多数
- 剤形
- 軟膏
- クリーム
- ローション
- スプレー
- 泡フォーム
- 塗布回数
- 1日2回
- ウイーク
- ロコイド
- アルメタ
- ミドル
- リンデロン
- リドメックス
- など
- 剤形
- 軟膏
- クリーム
- ローション
- 塗布回数
- 1日2回
- 問題点
- 長期連用で皮膚が薄くなる
- ストロング
- マイザー
- アンテベート
- ネリゾナ
- など
- 剤形
- 軟膏
- クリーム
- ローション
- 塗布回数
- 1日2回塗布
- 問題点
- 長期連用で皮膚が薄くなる
- 免疫抑制
- 抗真菌作用
- プロトピック
- 剤形
- 小児用
- 大人用
- 塗布回数
- 1日2回
- メリット
- Tリンパ球の抑制
- 皮膚が薄くならない
- 問題点
- 時に灼熱感
- 注意
- 妊娠時は使えません
- ウイルス感染に注意