やけど・熱傷をしたら
まずは 30分程度しっかり冷やす ことが最重要です
- 冷水やアイスノンを使用しましょう
- 服の上からでも構いません
- 痛みが落ち着くまで冷却を続けてください
水ぶくれ(水疱)ができた場合
・水疱の中の液体は、清潔な針で刺して排出します。
・水疱の膜は剥がさず、そのまま残してください。
・水疱の膜は、天然の被覆材として傷を守ります。
1週間後のチェックポイント
1週間経過したら、水疱の膜を取り除きます。
✅ 新しい皮膚が再生している → 問題ありません
❌ 皮膚が再生していない → 形成外科を受診してください
熱傷治療方針
熱傷診療ガイドライン
熱傷診療は、日本熱傷学会をはじめ、形成外科学会、皮膚科学会など 各学会からガイドラインが公表されています。
- 日本熱傷学会
熱傷診療ガイドライン(PDF) - 日本皮膚科学会
熱傷診療ガイドライン(PDF)
Drてらだ流|小範囲熱傷治療フローチャート
臨床現場では、ガイドラインを理解していても 「実際にどう判断するか」に迷うことが少なくありません。
私自身の35年間の臨床経験をもとに、 現在実践している小範囲熱傷の治療方針を フローチャート形式でまとめました。
※ 本フローチャートは やけど(熱傷)を治療する医療関係者向けであり、 一般の方を対象とした内容ではありません。
やけど統計
調査期間:2021年4月~2022年3月
女性34名、男性14名、計48名のやけど症例について検討しました。
やけどの好発部位は?
やけどしやすい年齢は?
やけどに季節は?
結論:季節による大きな差は認められませんでした。
やけどの主な原因は?
接触と液体によるやけどが、原因の上位2つを占めていました。
具体的な原因は?
原因は家庭内・職場・屋外など多岐にわたり、さまざまでした。
通院回数は?
つまり、本統計では 軽症のやけどが多い結果でした。
ただし、 体表面積の5~10%以上のやけどの場合は、 総合病院の形成外科・皮膚科での治療が必要となるため、 連携病院をご紹介することがあります。
熱傷の原因
クリニックでは小さい範囲の熱傷(やけど)を治療する機会が多くみられます。 その中でも、原因として特に多いものがいくつかあります。
主な原因
- ヘアアイロン
高温であるため、短時間の接触でも比較的深い熱傷になりやすいのが特徴です。 - 湯たんぽ(冬季)
低温でも長時間接触することで、いわゆる低温熱傷を生じやすくなります。
とくに低温熱傷は、初期症状が軽く見えることも多く、 受診が遅れる傾向があります。
医療現場では、原因と接触時間を正確に把握することが、 重症度評価と治療方針決定の重要なポイントとなります。
ヘアアイロンによる熱傷
状況
ヘアアイロンは、おでこ・頬・首・腕などに接触しやすい部位です。 多くの場合は一瞬の接触であるため、 1〜2週間で治癒する浅達性Ⅱ度熱傷にとどまることがほとんどです。
水疱が膨らんでいる場合
受傷後1〜2日してから水疱が出現した場合は、 水疱内の液体のみを抜き、 水疱の膜は残したままにしてください。
ワセリンをたっぷり塗布し、 ガーゼを当てて保護すると良好な治癒が期待できます。
水疱が破れた場合
初めから水疱が破れている場合は、 やや深いやけどの可能性があります。
皮膚科または形成外科を必ず受診してください。
深達化する可能性があるため、 自己判断でのラップ療法は避けるほうが無難です。
ヘアアイロン熱傷の治療経過
受傷後
ヘアアイロンは非常に高温になるため、 ちょっとした操作ミスで皮膚に触れてしまい、 火傷を負うケースが少なくありません。
接触しやすい部位は、 おでこ・頬・頚部・肩部・腕などです。
治癒後(2年後)
治療は軟膏塗布のみで行いました。
1〜2週間で乾燥し、痂皮が自然に脱落して治癒しています。
ヘアアイロンによる火傷は 浅達性Ⅱ度熱傷であることが多く、 適切に治療すれば跡形なく治るケースがほとんどです。
湯たんぽによる熱傷(低温熱傷)
状況
湯たんぽによるやけどは、一般に低温熱傷と呼ばれます。 下腿の足首寄りに丸い形で生じることが多く、 見た目よりも深い熱傷になっているケースが少なくありません。
多くの場合、深達性Ⅱ度熱傷〜Ⅲ度熱傷となっています。
ラップ療法について
湯たんぽによるやけどでは、ラップ療法は行わないでください。 必ず皮膚科または形成外科を受診してください。
実際に、ラップ療法により細菌感染を起こし、ジクジクした状態になってしまった ケースを経験しています。
お湯の温度に注意
湯たんぽによる熱傷では、 沸かしたての100℃近い熱湯を入れている方が多い印象があります。 くれぐれも熱湯は使用しないでください。
「長時間温めたい」というお気持ちは理解できますが、 お湯の温度は50〜60℃程度にとどめる方が安全です。
▶ 湯たんぽやけどの詳しい経過については、
こちらをご覧ください
後遺症
一度深いやけどを起こしてしまうと、 治癒後も赤みや茶色い痕が 年単位で残ることがあります。
湯たんぽ熱傷は予防が何より重要です。
やけどの深さと経過
注意:
やけどの深さは常に一定ではありません。 同じ創部でも、浅い部分と深い部分が混在しているため、 治癒のスピードは均一ではなく、部位によって異なります。
1度熱傷
赤みのみで、水疱は形成しません。
通常、1日程度で自然に消失します。
浅い2度熱傷(SDB:Superficial Dermal Burn)
- 真皮浅層まで熱が到達
- 水疱が形成される(破れていない)
- 1~2週間で乾燥し治癒
赤みがしばらく残ることがありますが、 一時的に薄茶色(炎症後色素沈着)になった後、 2~3ヶ月かけて正常な皮膚色に戻ります。
深い2度熱傷(DDB:Deep Dermal Burn)
- 真皮深層まで熱が到達
- 水疱は初めから破れていることが多い
- 皮膚は白色調を呈する
- 赤みがあっても変化せず、固定されたように見える
- 赤と白がまだら状に分布
放置すると、皮膚は茶色に変色し壊死に至ります。
壊死組織は、局所麻酔下でデブリードマン(削除)が必要になります。
壊死組織除去後、
毛細血管が再生 → 赤い肉芽形成 → 上皮再生
の順に回復していきます。
最近では、受傷約1週間後からフィブラストスプレーを使用すると、 回復が促進される印象があります。
3度熱傷(Full Thickness Burn)
皮膚は茶色または黒色に変色しています。
皮膚の再生能力は失われており、
極小範囲を除き、皮膚移植手術の適応となります。
やけどの治療
1度熱傷
冷やすのみ
流水やアイスノンで30分程度冷却してください。
赤くなっただけで水疱がなければ、通院は不要です。
浅い2度熱傷
深い2度熱傷
- 1週間後、真皮が白色の場合は フィブラストスプレーを使用します。
- ゲーベンクリームは初期使用しません。
- メロリンなどの非固着性ドレッシング材を使用します。
3度熱傷
- 5cm以下:局所処置
- 10cm以上:総合病院紹介
- 5〜10cm:症例ごとに判断
- ゲーベンクリームは初期使用しません
特殊な外用剤
創傷治療で使用する特殊外用剤
フィブラストスプレー
| 会社 | 科研製薬 |
| 成分 | トラフェルミン 塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF) |
| 投与法 | スプレー式(噴霧式) |
| 適応 | ・熱傷や外傷による皮膚潰瘍 ・壊死組織のない褥瘡 |
使用方法
- 付属の生理食塩水をバイアルに注入し溶解
- スプレーキャップを装着
- 創部から約5cm離して5回噴霧
- 約30秒待ってから被覆材で保護
副反応
- 刺激感
- 疼痛
- 発赤
- そう痒感
- 接触皮膚炎(かぶれ)
- 滲出液増加
- 過剰肉芽形成
アクトシン軟膏
| 会社 | マルホ |
| 成分 | ブクラデシンナトリウム |
| 投与法 | 患部に1日1〜2回塗布 |
| 適応 | ・熱傷や外傷による皮膚潰瘍 ・壊死組織のない褥瘡 ・上皮化直前の最終段階で使用 |
作用機序
- ATP前駆物質(cAMP)による細胞活性化
- 表皮角化細胞増殖促進
- 毛細血管増殖促進
- 血流改善作用
副反応
- 独特な臭い
- 刺激感
- 疼痛
- 発赤
- そう痒感
- 出血
- 接触皮膚炎
- 肥厚性瘢痕
やけどのアフターケア
残った赤み
やけどが早く治っても、赤みが残ります。これは炎症ではなく、表皮が薄くなったため、血流のある真皮が透けて見えている状態です。
表皮のメラニンが減少しているため、紫外線に弱くなっています。
赤みが消えるまでUVケアは必須です。
UVケアをしていても、軽度の茶色変化が生じることがありますが、UV対策を継続すると徐々に改善します。
回復には半年〜1年程度かかります。
赤みが1〜2ヶ月以上続く場合、
皮膚潰瘍治療薬である アクトシン軟膏により、
- 表皮角化細胞の増殖促進
- 表皮回復の促進
- 赤みの早期改善
炎症後色素沈着
- 亜鉛:男性 40mg/日、女性 30mg/日
- ビタミンC:1回 1g、1日 2〜3回
トランサミン局所注射療法
1回 2,200円〜(範囲により変動)
肥厚性瘢痕
- 軽度:ステロイド徐放テープ
エクラプラスターを貼付 - 重度:
・ステロイド徐放テープ
・ケナコルト局所注射
ひきつれ(瘢痕拘縮)
広範囲熱傷後の肥厚性瘢痕では、瘢痕拘縮(ひきつれ)が生じることがあります。
瘢痕拘縮が強い場合は、
皮弁形成術による解除手術が必要となることがあります。
やけどの合併症
ひきつれ・瘢痕拘縮
手指・肘・脇など、関節を含む部位の深いやけどでは、 治癒に時間がかかると、皮膚が縮んでひきつれ(瘢痕拘縮)が生じます。
- 植皮手術
- 皮弁形成術
機能障害を防ぐため、専門的な形成外科治療が必要になります。
ケロイド・肥厚性瘢痕
深いやけどが治るまでに時間がかかる場合、 ケロイドや肥厚性瘢痕が発生することがあります。
発生には以下が関係します:
- やけどの深さ
- 治癒までの期間
- 体質
- 発生部位(胸・肩・関節など)
- スポンジ圧迫療法
- シリコンシート貼付
- ステロイド徐放テープ(ドレニゾンテープ)
- ステロイド局所注射(ケナコルト)
真性ケロイドでは、
電子線照射療法が選択される場合があります。
最後までお読みくださり, ありがとうございます。
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