やけど・熱傷
- 30分程度、冷水やアイスノンで冷やしましょう!
- 水疱の液体は針で刺して出し、その膜はキープ。
- 1週間経過したら、水疱の膜は取り除く
- ⇒新しい皮膚が再生していたら、OK
- ⇒新しい皮膚が再生してなかったら、形成外科へ
熱傷治療方針
熱傷ガイドライン
- 熱傷学会を始め、形成外科学会や皮膚科学会からも公表されています。
Drてらだ流
小範囲熱傷治療フローチャート
- 臨床現場で実践的にはどうしたよいのか、判断するのはなかなか難しいものです。私の35年間の臨床経験から得た現在の治療方針をフローチャートにまとめましたので、ご参考にしていただければ、幸いです。
- やけど(熱傷)を治療する医療関係者向けのフローチャートです。一般向けではございません。
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熱傷の原因
クリニックでは小さい範囲のやけどを治療する機会が多いのですが、原因で最も多いのは、ヘアアイロンです。そして、冬になると、湯たんぽです。
湯たんぽ
状況
湯たんぽの場合は、低温熱傷とよく呼ばれますが、下腿の足首よりに丸くやけどします。たいがい、深い2度熱傷~3度熱傷になっています。 |
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ラップ療法
ラップ療法は行わず、皮膚科もしくは形成外科を必ず受診してください。細菌感染でジクジクになってしまったケースに遭遇したことがあります。 |
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お湯の温度
湯たんぽやけどは、沸かしたての100度近い熱湯を入れている方が多い印象がりますので、くれぐれも熱湯は入れないようにしてください。できるだけ、長い時間温めようと思う気持ちは理解できますが、せいぜい50,60度のお湯にしておいた方が安全です。 |
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経過
後遺症
一旦、深いやけどを患ってしまうと、治っても、赤みや茶色など痕が長期間(年単位)残りますので、予防が大切です。 |
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やけどの深さと経過
注意していただきたいことは、一般的なやけどの深さは常に一定ではないことです。浅い部分もあれば、深い部分もあり、混じっているので、治り方は均一にはなりません。
1度熱傷
赤みのみで、1日で消えます。 |
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浅い2度熱傷 SDB
真皮の浅い層に熱が達して、水疱ができます。水疱は破れていません。1~2週間で乾いてきて、治ります。皮膚の赤みが少し残ると、あとで薄茶色になりますが、2,3ヶ月かけて、徐々に普通の皮膚の色に戻ります。 |
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深い2度熱傷 DDB
真皮深層まで熱が達していて、水疱は最初から破れてしまっていることが多いです。真皮の色は白っぽくなります。赤みがあっても、赤さが変化せず、固定されている感じになります。赤と白がまだら状に分布します。 |
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放っておくと、皮膚が茶色になり、壊死に陥ります。壊死になってしまうと、局所麻酔を行い、薄く削り取る必要があります。壊死組織がなくなると、毛細血管が再生してきます。毛細血管の塊=赤い肉芽ができると、上皮の再生が始まります。 |
最近は、1週間後から、フィブラストスプレーを噴霧すると、回復が早くなる印象があります。 |
DDBの治療法
受傷後1週間で水疱を除去して、やけどの深さ判定を確定して、浅い2度熱傷か、深い2度熱傷かを判定し、フィブラストスプレーを使用するかどうか、決めています。 |
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3度熱傷
最初から茶色や黒色に皮膚が変わっている状態。極小さいやけどではない限り、皮膚移植手術の適応になります。 |
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やけどの治療
1度熱傷
冷やすのみ |
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流水やアイスノンで30分程度冷やしてください。 |
赤くなっただけで、水疱ができなければ、病院に通わなくても大丈夫です。 |
ご注意)30分以上冷やす必要はありません。末梢循環障害が生じますので、冷やしすぎないようにご注意ください。 |
浅い2度熱傷
1.水疱があれば、水疱膜を少し破って、液体を出して、薄く剥がれた表皮を密着させておきます。この液体はリンパ液です。毛細血管が熱損傷で血管透過性が上昇しますので、リンパ液が漏れ出ている状態です。このため、ラップ療法をしていると、リンパ液でベタベタになってきますので、カーゼなどで吸い取る必要があります。 |
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2.軟膏は最初、抗生剤が含まれたステロイド(リンデロンVG)を使うことが多いですが、少々問題点もありますので、最近は精製ワセリン(医療用ではプロペト)をたっぷりと暑さ5ミリに塗布しておくことをお勧めしています。 |
3.創部に固着しない高吸収性ドレッシング材メロリンの使用しています。市販品だと プラスモイストなどが該当します。薬局の薬剤師さんとご相談ください。 |
深い2度熱傷
1.受傷後1週間経過し、真皮の色が白っぽい場合は、フィブラストスプレーを直接やけどに噴霧していただきます。ワセリンをたっぷりと厚さ5ミリに塗ったガーゼで保護します。フィブラストスプレーを噴霧すると、深い2度熱傷が浅い2度熱傷のように早く治る印象があります。 |
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2.白いゲーベンクリームは使っていません。銀が含まれた抗菌作用が強い外用薬で、ひどい細菌感染が発生した場合に使用する薬剤です。やけどの治療で、最初から使うものではありません。 |
3. メロリンを使用しています。市販品だと プラスモイストなどが該当します。薬局の薬剤師さんとご相談ください。 |
3度熱傷
1.小範囲(約5cm以下)であれば、局所麻酔下に壊死組織を除去して、自宅でフィブラストスプレーを噴霧していただきます。 |
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2.中等度以上の範囲(10cm以上)では総合病院の形成外科をご紹介します。 |
3.5~10cmはケース・バイ・ケースで判断します。 |
4.白いゲーベンクリームは使っていません。銀が含まれた抗菌作用が強い外用薬で、ひどい細菌感染が発生した場合に使用する薬剤です。やけどの治療で、最初から使うものではありません。 |
特殊な外用剤
以下の薬剤は、深いやけどの場合に使用しますが、やけどした直後ではなく、1,2週間後など時間が経ってから使い始めるのが適切です。 |
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1.フィブラストスプレー
塩基性繊維芽細胞増殖因子の外用薬であるフィブラストスプレーは、深い2度熱傷や3度熱傷で、壊死した真皮を除去した後で、早くて受傷1週間後から、使用開始します。壊死組織がなくても、皮膚の色が赤と白と混じっている不安定な状態の時に使用開始すると、深い2度熱傷から急速に改善する場合があります。 |
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2.アクトシン軟膏
サイクリックAMPの外用薬であるアクトシン軟膏は、フィブラストスプレーで肉芽ができてきたら、上皮の回復を促すタイミングで使用を開始します。やけどして、すぐ使う外用剤ではありません。一部のドクターが誤解しているようですが、テープを剥がした時に生じる皮膚のびらんや急性期のやけどに塗布する薬剤ではなく、慢性化した皮膚潰瘍で上皮の再生が遅い時に塗布する特殊な軟膏です。自験例ですが、レーザーで除去したほくろ痕の凹みや赤み、ニキビ痕の凹みにも有効性を認めています。 |
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フィブラスト
会社
科研製薬 |
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成分
トラフェルミン | 塩基性線維芽細胞増殖因子 (ベーシックFGF) |
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投与法
スプレー式(噴霧式) |
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適応
熱傷や外傷による皮膚潰瘍 |
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壊死組織がない褥瘡(じょくそう) |
使用方法
付属の生理食塩水を製剤が入ったガラスのバイヤルに注入。 |
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粉状のbFGF製剤を溶解し、スプレーキャップで蓋をしてから噴霧。 |
創部から5cm離し、5回噴霧。 |
30秒待ってから、被覆します。 |
副反応
刺激感、疼痛、発赤、そう痒感 |
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かぶれ、滲出液の増加、過剰肉芽形成 |
図(科研製薬サイトから引用)
アクトシン軟膏
会社
マルホ |
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成分
ブクラデシン ナトリウム |
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投与法
患部に1日1回~2回塗布 |
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適応
熱傷や外傷による皮膚潰瘍 |
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壊死組織がない褥瘡 |
ただし、あと少しの最終段階で使用する |
作用
ATP前駆物質のサイクリックAMP |
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エネルギー源の物質 |
表皮角化細胞増殖作用 |
毛細血管増殖作用 |
血流改善作用 |
副反応
独特な臭い、刺激感、疼痛、発赤 |
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そう痒感、出血、かぶれ、肥厚性瘢痕 |
写真
熱傷のアフタケア
残った赤み
早く治っても、赤みが残ります。これは炎症ではなく、表皮が薄くなったためです。血液が流れている真皮が赤く透けて見えている状態です。 |
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メラニン色素が少なくなり、紫外線に対して、弱くなっていますので、赤みがなくなるまで、UVケアは必須です。 |
UVケアしていても、少し茶色になってくる場合がありますが、UVケアしていると、徐々に薄くなってきます。半年から1年かかります。 |
赤みが1,2ヶ月以上続く場合は、自験例で保険適応外使用にはなりますが、皮膚潰瘍治療外用薬のアクトシン軟膏が表皮角化細胞を増殖させる作用がありますので、表皮が早く回復して、赤みが早く取れてくる印象があります。 |
炎症後色素沈着
薄い茶色には、亜鉛サプリメントやビタミンCサプリメントの内服。 | 亜鉛の1日推奨量 男性40mg、女性30mg ビタミンCの1日推奨量 1回1g 1日2,3回 |
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当院の自費治療 | トランサミン局注療法 1回2,200円~範囲による |
肥厚性瘢痕
薄い肥厚性瘢痕には、ステロイド徐放テープのドレニゾンテープやエクラプラスターを貼付すると効果があります。 |
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ぶ厚い肥厚性瘢痕には、ステロイド徐放テープとケナコルト局所注射が適応になります。 |
広範囲熱傷後に生じた肥厚性瘢痕は瘢痕拘縮(ひきつれ)を生じることがあります。この場合は、総合病院の形成外科での治療になります。 |
熱傷の合併症
ひきつれ・瘢痕拘縮
手指や肘、脇など関節が含まれる部位が深いやけどになり、治癒に時間がかかると、ひきつれが起こります。植皮手術や皮弁形成術が必要になります。
ケロイド・肥厚性瘢痕
深いやけどが治るのに時間がかかると、発生します。部位や体質も関係しています。
スポンジ圧迫療法やシリコンシート貼付、ステロイドを除法するドレニゾンテープ貼付、ステロイドのケナコルト注射で対処療法を行うのが一般的です。
ひどい真性ケロイドでは、電子線照射療法も選択肢の一つです。日本医科大学形成外科(本院もしくは北総)をご紹介します。