




擦り傷,擦過傷治療結果
ケース3
おでこ、上まぶた、下まぶたのすり傷。エムラクリームを塗布後30分してから処置を始めました。受傷から時間が経っていて、白っぽい膜状のフィブリンが析出していたので、積極的に除去しました。生食を垂らしながら、ブラシを掃くように動かして、微小な汚れをこすり落とすと、思った以上に落ちました。
すり傷から汁が出てきます。汁はリンパ液でフィブリンを含むので、膜ができます。汚れはこの膜の下にあるので、積極的に除去ください。





ケース2
頬部のすり傷と切り傷。同じ場所にありますが、処置可能です。お子さんは怖がらせないように、処置のときの痛みを完全になくすことがポイントになります。





ケース1
頬部広範囲のすり傷と眉毛の切り傷。ダーモスコープで皮膚表面を拡大してみると、細かい粒がたくさん付着しています。皮膚にめり込んでいるので、水で軽く洗ったくらいでは落ちません。麻酔クリーム塗布後、生理食塩水を流しながら、ブラッシングしたあと、拡大してみると、付着物はほぼ除去できています。切り傷は創縁切除後に真皮縫合で閉鎖しました。処置後3日には上皮化しています。異物が付着していないと、治りがすごく早いことにしばしば驚かされます。やや深かった部分は炎症後色素沈着が発生しています。UVケアと保湿をしっかり行い、徐々に改善しました。
原因
皮膚が損傷するメカニズムには大きく分けて、2つあります。机の角など何かが強く当たるとか、鋭い刃物で切れるとか機械的な原因と、熱や有機溶媒、酸アルカリなど化学的な原因です。
すり傷と切り傷では、まず、皮膚損傷の面積が異なります。すり傷は面で、切り傷は線で生じます。損傷の深さから見ると、血が出る場合は、真皮まで損傷が及んでいます。血が出ない場合は、表皮のみです。通常、損傷の深さは均一ではありませんので、浅い部分や深い部分が混じっている状態です。
机の角など何かに強く当たると、皮膚が押し潰された状態になります。これを挫滅と言います。挫滅した状態で、皮膚が切れてしまうと、創縁の皮膚は弱く、脆くなっています。つまり、毛細血管がダメージを受けて、血液循環が悪く、治りが良くない状態になります。
治療のポイント
すり傷
すり傷(擦過傷)をきれいに治したいとき、湿潤環境も大切ですが、その前にもっと大切なことがあります。

接触型皮膚拡大鏡(ダーモスコープ)ですり傷の表面を拡大してみると、小さな砂粒、金属片、アスファルト片など汚れが多数付着しています。これは水道水で洗うだけでは、なかなか落ちません。皮膚表面の表皮が剥がれて、真皮表層に汚れがくい込んでいるからです。ブラシで積極的に掃い落とすことが必要です。
でも、痛みがありますから、麻酔クリームや麻酔注射が必要ですので、病院に行きましょう。
自己責任で、痛みを伴いますが、ご自分で新しい歯ブラシを使って、すり傷をきれいにしようと、努力なさる方は止めません。
アフタケア
早く治る
炎症が最小限に食い止められる。これがきれいに治る理由です。けれども、しばらく、赤みが残ります。これは炎症ではなく、表皮が薄くなったため、血液が流れている真皮が赤く透けて見えている状態です。メラニン色素が少なくなり、紫外線に対して、弱くなっていますので、赤みがなくなるまで、UVケアは必須です。切り傷のあとにはテーピング、すり傷のあとには日焼け止めが最適でしょう。自験例で保険適応外使用にはなりますが、皮膚潰瘍治療外用薬のアクトシン軟膏が表皮角化細胞を増殖させる作用がありますので、表皮が早く回復して、赤みが早く取れてくる印象があります。
治りが悪い
炎症が長引く=色素沈着や肥厚性瘢痕の発生。炎症後色素沈着や炎症の赤みにはビタミンCやトラネキサム酸の内服がよいです。厚みが薄い肥厚性瘢痕にはステロイド徐放テープのドレニゾンテープを貼付すると効果があります。厚い肥厚性瘢痕には、テープだけだと効果が少ないので、痛みはありますが、ケナコルト注射が適応になります。