化膿した粉瘤の治療
★学会発表★
くり抜き排膿+シリンジ生食洗浄
学会発表 | 2014年4月横浜で開かれた臨床皮膚科医会でポスター発表しました。 |
---|---|
趣旨 | 日常診療で頻繁に対応しなければならない化膿した粉瘤に対するくりぬき処置の方法です。直径3-5㎜に丸くくりぬいた皮膚の穴を通して、シリンジで生理食塩水を出し入れするポンピング洗浄を行い、内部の膿と粕状の皮脂を除去する方法です。 |
疑問点 | この処置での疑問は「しこりは残っているのか?」 ケース・バイ・ケースで、炎症がひどくて、膿がたくさん出て、粉瘤の被膜は溶けて、なくなってしまった場合では再発はしません。一方、炎症が軽くて、粉瘤の被膜が溶けないで、一部残ってしまうと、あとでしこりが再び大きくなる場合があり、摘出手術を1-3ヶ月後に予定します。 |
治療目的 | くり抜き排膿+シリンジ生食洗浄の目的は、しこりを摘出することではなく、素早く痛みをなくすことです。 しこりを取ることではありません。最初の痛い注射も皮内のみで最小限です。化膿した状態で、周囲に広範囲に麻酔を注射して、しこりの被膜を全部取ることは、まったく必要ありません。炎症が拡大し、もっと痛くなり、滲出液が多くなってしまいますので、ご注意ください。 |
治療方法
以前の方法 | 化膿性粉瘤に対する切開は、直線や十字(クロス)に切ったりしていました。 炎症があっても、粉瘤の被膜を除去しようとしていました。 |
---|---|
現在の方法 | 目的は、しこりの除去ではなく、痛みの原因となる膿を出すこと。 治ったときの傷跡も考慮して、丸くくり抜きことによって、シリンジの先端をくり抜いた穴に入れて、洗浄する。 粉瘤の炎症で癒着したり、溶けたりしている被膜除去は侵襲が大きいので、行いません。炎症が拡大してしまう可能性もあります。 |
麻酔の方法 | 粉瘤の周囲に広範囲に麻酔を注射しません。 中央部の皮下に少量の麻酔薬を注射するのみす。 |
Q&A
1.器具 | Q: 丸くくり抜くのなら、ディスポパンチをどうして使わないのか? A: 11番メスの方がディスポパンチよりかなり安いからです。 |
---|---|
2.再発 | Q: しこりが再発する場合はありますか? A: 再発しない場合と再発する場合と両方あります。しこりのサイズや化膿した範囲が関係していると思います。概ね2cm以下と小さければ、治りやすいし、3cm以上と大きければ、治りにくくなります。 |
3.抗生剤内服 | Q: 抗生剤の内服はしないのか? A: 他院で抗生剤内服処方を受けたが、全然治らないという患者様が来院されますので、基本的に排膿しない限り、治らないと考えています。 A: 逆に排膿すれば、抗生剤の内服は不要で、軟膏のみで自宅処置してもらい、再診の1週間後には治っていることが多いです。 A: 元の粉瘤が大きく、排膿が不十分の場合は、なかなかすっきり治らない場合もあります。 |
4.再処置 | Q: 早く治りますか?通院は必要ですか? A: しこりが大きいと、なかなかすっきり治らない場合がありますので、通院は必要です。その際は、内容物が残っていて、出切っていない場合です。再度、洗浄して、内容物を押し出す必要があります。 |