脂肪腫摘出手術

背部に多い柔らかい盛り上がりです。痛みがないので、長年放置しがち。でも、5年~10年で巨大になることもあるので、形成外科で診断を受けましょう。
特徴 | 脂肪腫は脂肪組織から発生するしこりです。 脂肪腫の好発部位は、背部に多いですが、上腕、腹部などにも発生します。 脂肪腫の深さは、3つに分類されます。 1.浅いタイプ 皮下と浅筋膜の間にできるコロッとした脂肪腫 2.深いタイプ 浅筋膜と深筋膜の間にできる癒着している脂肪腫 3.さらに深いタイプ 筋膜下・筋肉内にできる癒着している脂肪腫 4.混合タイプ 浅い層から筋膜下にあり、癒着がひどい脂肪腫 脂肪腫は自然に治ることはなく、5年~10年で大きくなってきます。 脂肪腫の治療は、被膜内の脂肪腫を摘出する外科的手術が必要です。 再発防止には完全摘出が重要です。早期の受診と適切な処置が望まれます。 |
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術式 | 従来法として、脂肪腫のサイズで皮膚を切開して、摘出する術式 改良法として、脂肪腫のサイズの半分程度の短い切開から摘出する術式。 ※注意:脂肪腫が皮膚や深部の筋膜と癒着していない状態に限定。 |
脂肪腫摘出手術の経験
症例1
背部に生じた巨大脂肪腫。
概要 | 背部に13cm大の無痛性皮膚膨隆を認め、エコー検査で脂肪腫の診断。小切開6cmから2分割して、巨大脂肪腫を摘出した。術後出血なし。 |
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手術名 | 皮膚・皮下腫瘍摘出術(露出以外12cm以上) |
しこり名 | 脂肪腫 |
経過 | 術後の圧迫は24時間、その後の出血は少量。自宅で自己処置を行い、2週間後に抜糸 |
費用 | 総額 34,550円(3割負担) 内訳 手術料25,080円 |
リスク | 疼痛、術後出血、術後感染、創離開 傷跡の残存、肥厚性瘢痕、ケロイド |
脂肪腫摘出手術のご案内
当院の特徴
要点 | 寺田院長は日本専門医機構認定形成外科専門医 手術は、院長と非常勤医師が担当します。 手術のご負担軽減のため、少ない通院日数を心がけています。 |
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通院7回
流れ | ①初診 エコー検査と診断 MRIもしくはCT検査の予約(板倉病院) ②画像診断 連携している板倉病院にて、MRIもしくはCT撮影 ③再診 画像検査の結果説明 手術説明とご承諾、手術予約 ④手術(30分~60分:大きさによる) 血腫防止のためドレーンを留置 ⑤再診(翌日) 出血のチェックとドレーン抜去 ⑥再診 1週間後に創部チェック ⑦再診 2週間後に抜糸 |
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例外 | 術後血腫や漿液腫が発生した場合は、週1回通院が1ヶ月程度必要になります。 術後1,2ヶ月で、傷跡が赤くなったり、硬く盛り上がる肥厚性瘢痕が発生した場合はご来院ください。 |
術前検査
要点 | 画像診断採血を行う場合があります。 術前採血検査はありません。 |
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例外 | 1.高血圧、糖尿病、心臓病、膠原病など持病がある方は検査を行う場合があります。 2.針刺し事故が発生した場合は、採血をお願いする場合があります。 3.術後出血、創離開、皮下血腫など合併症が発生した場合は、通院回数は増えます。 |
手術料
保険診療では脂肪腫の深さ、露出部や露出部以外、しこりのサイズで区分しています。
軟部腫瘍摘出 | 1.筋膜や筋肉に脂肪腫が浸潤していた場合 2.筋肉下に発生していた場合 肩、上腕、前腕、大腿、下腿、躯幹 25,470円(3割負担) 手、足 11,250円(3割負担) |
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露出部 | 皮下の場合 頭部、顔面、頚部、肘・前腕・手、膝・下腿・足背 2cm未満 約5000円(3割負担) 2~4cm 約11,000円(3割負担) 4cm以上 約15,000円(3割負担) |
露出部以外 | 皮下の場合 胸部、腹部、背部、陰部、殿部、上腕・肩、大腿、足底 3cm未満 約3,900円(3割負担) 3~6cm 約9,700円(3割負担) 6~12cm 約12,500円(3割負担) 12cm以上 約25,000円(3割負担) |
予約料
料金 | 10分手術で1,000円 |
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付記 | 手術時間にはお着替えや麻酔の待機時間、術後の説明時間などを含めます。 |
病理組織検査
要点 | 脂肪腫の細胞に異常がないかどうか病理医に診断していただきます。 |
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費用 | 3割負担 約3,000円 |
お子様の手術
お子様に脂肪腫発生は経験がありません。可能性がある場合は連携病院の形成外科をご紹介します。
摘出手術の手順
手順 | 脂肪腫周囲に局所麻酔の注射を行います。 痛みがあります。 脂肪腫直上の皮膚を切開します。 脂肪腫の周囲組織を剥離します。 皮膚からの剥離 筋膜、筋肉からの剥離 脂肪腫を摘出します。 電気メスで止血します。 切開部は手術用ナイロン糸などで皮下(浅筋膜、真皮)、皮膚を縫合閉鎖します。 皮下縫合糸は残ります。 皮膚縫合の抜糸は1週間~2週間かかります。(部位による) 出血が多かった場合は、血抜き用のドレーンチューブを留置する場合があります。 この場合、翌日診察で、ドレーンを抜去します。 |
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※吸収糸※
注意 | 吸収する過程で炎症を引き起こすことが増えている印象があるため、最近は使用しない場合が増えています。 |
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合併症とアフタケア
痛み
要点 | 術後1,2時間で麻酔効果がなくなっても、通常はさほど痛くないことが多いですが、個人差があります。 |
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対処 | ご希望される場合、痛み止めを処方します。 ご希望されないと、痛み止めをお渡ししません。 |
注意 | 手術終了時に担当者が痛み止めのおくすりをご希望されるかどうか確認しますが、事前にお伝えいただくと助かります。 |
皮下血腫、内出血
要点 | とくに大きな脂肪腫を摘出した後に出血しやすいので、ドレーンというチューブを皮下に一晩留置する場合があります。この時はドレーンを抜く必要がありますので、翌日の受診をお願いしています。 稀に摘出部位からじわじわと出血が続き、内出血が生じることがあります。ひどくなると、血液が溜まってしまう場合もあります。 |
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対処 | 針を刺して溜まった血液を吸引したり、縫合した傷口を一部開けて、血栓状に固まった血液を排出する場合もあります。年に1回か2回ある程度の頻度です。 |
線状瘢痕
要点 | 通常の経過です。アフタケアとして、約1ヶ月間、茶色テープを貼って、傷跡を保護していただきます。 |
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経過 | 傷跡は消えることはございません。 2,3ヶ月すると、体質によりますが、かなりきれいになって白い細い傷跡がわからなくなる方から、ほどほどの状態になる方、赤い肥厚性瘢痕になってくる方といろいろ個人差があります。 |
真皮縫合糸の排出
要点 | 3ヶ月程度で吸収される糸で真皮縫合する場合があります。 数カ月経って、排出されてくる場合は、除去します。 |
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注意 | 最近、吸収過程で赤くなる場合が増加している印象があるため、吸収糸の使用頻度が減っています。 |
皮膚の凹み
要点 | 直径5cm以上の大きなしこりを除去したあとは、少し凹みを生じることがあります。徐々に元に戻ることが多いですが、凹みが残る場合もあります。 |
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対処 | 経過観察になります。 |
盛り上がった傷跡=肥厚性瘢痕・ケロイド
要点 | 傷が治るまでに時間がかかったり、体質や部位(胸部や肩など)によって、傷跡が徐々に赤く盛り上がってくる場合があります。 |
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対処 | ステロイド徐放テープやステロイド局所注射でコントロールしますが、数ヶ月以上と時間がかかります。 |